臨床腫瘍学会、患者との連携を重視

 第16回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO)が、7月19~21日の3日間にわたり、神戸市で開催される。これに先立ち、6月25日に東京都でプレスセミナーが開催され、がん治療の最新動向と学術集会での注目のトピックスが紹介された。学会長を務める九州大学大学院胸部疾患研究施設長の中西洋一氏は「これからのがん治療では、学会とがん患者、家族との連携が必要。それを意識してプログラムを構成した」と述べ、がん患者や家族を含む一般市民が、学術集会に自由に聴講できるようにしたことを明らかにした。

 学会のテーマは”Beyond Borders”。「国境」「臓器」「職種・立場」などの垣根を越えてプログラムが組まれているのが特徴。従来にも増して国際的な学会を目指しており、がん治療全体を臓器横断的に俯瞰でき、医療従事者だけでなく患者の参加を得て、さまざまな立場から提言、討論が行われる予定だという。

注目の演題は、ゲノム医療やがん免疫療法

 プレスセミナーでは、学会の見どころである①がんゲノム医療②がん免疫療法③希少がん-に関し、3人の登壇者から話題が提供された。
 がんゲノム医療については、近畿大学ゲノム生物学教室教授の西尾和人氏が講演。ゲノム情報を用いた医療が急ピッチで進む中で、学会では”Beyond Organ”というテーマで、臓器横断的に活用できるバイオマーカーの国内における実用化の可能性などが議論されるという。背景には、2017年5月に米FDAが、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)のある固形がんに対し、腫瘍のある臓器や組織にかかわらず、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の適応追加を承認した、という新たな動きがある。

 さらに、採血だけという低侵襲な遺伝子検査が可能なリキッドバイオプシーが注目される中、その実用化に向けた最先端の研究に関して、国内外の研究者から発表が行われる。放射線治療におけるゲノム解析を用いたプレシジョン・メディスンについての報告も予定されている。

希少がんの課題解決に向けて討議

 悪性黒色腫や肺がんなどに対する治療薬として承認され、進行がんを根治させる可能性のある治療法として注目されるがん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)については、現在、他剤との併用療法や放射線療法との併用などが試みられ、効果を最大化するための取り組みが世界中で活発化している。このがん免疫療法に関しては、九州大学大学院胸部疾患研究施設助教の田中謙太郎氏が見どころを紹介した。
 放射線療法と抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の併用療法の確立を目指した研究や、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の有効性といった、新規治療法の開発に関する発表が行われる予定。さらに、がん免疫療法に特徴的な副作用である免疫系の副作用マネジメントとして、チーム医療の必要性や副作用の種類別の対策など、より安全な使用に向けた工夫が示されるという。

 希少がんについては、九州大学医学研究院連携病態修復内科学准教授の草場仁志氏が登壇。注目のプログラムとして、BRAFやRET、METといった希少ドライバー遺伝子変異の診断や治療に関する発表や、希少がんの臨床研究と研究体制の構築についての報告などを紹介した。

 なお、学会長の中西氏によると、Beyond Bordersの理念に基づき、立場を越えて学び合える学術集会にするため、がん患者、家族、市民が3日間を通して1,000円(ランチ付)で参加できるペイシェント・アドボケイト・プログラム(PAP)を開催する予定としている。

(小沼紀子)

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