がん関連神経障害性疼痛へ抗うつ薬の有用性

デュロキセチンの有用性をランダム化比較試験で検証

 がん患者で生じるがん関連神経障害性疼痛(Cancer-related neuropathic pain;CNP)は、オピオイドに抵抗性かつ難治性であることが少なくない。こうしたオピオイドで鎮痛効果が得られない持続痛のあるがん患者において、疼痛管理は重要な臨床課題とされている。近畿大学内科学教室心療内科部門/同大学病院がんセンター緩和ケアセンター講師の松岡弘道氏、国立がん研究センター中央病院緩和医療科科長の里見絵理子氏らは、がん患者のCNPに対する抗うつ薬デュロキセチンの有用性の検証を目的に国内多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験JORTC-PAL08(DIRECT試験)を実施。その結果、CNPに対しデュロキセチンは一定の効果を示したことを米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018、6月1~5日、シカゴ)で報告した。

神経障害性疼痛に対してはプレガバリン、アミトリプチリンのみが適応承認

 デュロキセチンは化学療法誘因性末梢神経障害(CIPN)に対する有効性が示されているが、CNPに関する報告は乏しい。また、実臨床においてオピオイドに抵抗性のCNPに対しては、抗てんかん薬のガバペンチノイド(ガバペンチンまたはプレガバリン)や三環系抗うつ薬(TCA)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有効性が報告されているものの、わが国では神経障害性疼痛に対する適応が承認されているのはプレガバリン、アミトリプチリンのみである。

 そこで松岡氏らは、オピオイドおよびガバペンチノイド(ガバペンチンまたはプレガバリン)に不応または不耐のCNP患者を対象として、抗うつ薬のデュロキセチンの効果を検証する国内多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験JORTC-PAL08(DIRECT試験)を行った。

主要評価項目は10日目の平均疼痛強度

 同試験の対象は①CNPと診断②オピオイド投与中③ガバペンチノイドに不応または不耐④疼痛を評価するNumerical Rating Scale(NRS)スコアが4以上―などの条件を満たす患者。CIPNの患者は除外された。

 国内12施設において登録された70例をデュロキセチン20~40mgを1日1回、10日間投与する群とプラセボを投与する群に1:1でランダムに割り付けた。

 主要評価項目はDay10の平均疼痛強度〔簡易疼痛質問票(Brief Pain Inventry;BPI)-item 5で評価〕。解析にはt検定(有意水準片側5%)を用いたComplete Case(CC)解析の結果を主として、さらにBaseline Observation Carried Forward (BOCF)解析を用いて感度分析を行った。

 患者背景はデュロキセチン群、プラセボ群でそれぞれ、年齢中央値は64.7歳、61.2歳、男性は62.9%、60.0%、全身状態(PS)は0/1/2/3/4が11.4%/34.3%/40.0%/14.3%/0%、8.6%/37.1%/31.4%/20.0%/2.9%だった。原疾患は肺がんが最も多く(デュロキセチン群31.4%、プラセボ群25.7%)、次いで消化器がん(同28.6%、11.4%)が多かった。

 試験の結果、Day10の平均疼痛強度はCC解析ではプラセボ群の4.88(95%CI 4.37~5.38)に対し、デュロキセチン群では4.03(同3.33~4.74)で、群間差は-0.84(同-1.71~0.02、P=0.0533)だった。BOCF解析ではプラセボ群の4.91(95%CI 4.41~5.41)に対し、デュロキセチン群では4.06(95%CI 3.37~4.74)で、群間差は-0.85(同-1.69~-0.01、P=0.0476)だった。

 またDay0と比較して、Day10時点で平均疼痛強度が50%以上改善していた割合は、プラセボ群の3.0%に対し、デュロキセチン群では32.4%と有意に高かった(P=0.002)。

「臨床における最小重要差」に近似

 なお、今回の試験結果では、CC解析において両群に有意差が認められなかった件について、松岡氏らは「がん疼痛における臨床的意義がある最小の差(Minimal Clinically Important Difference;MID、最小重要差)は、11段階のNRSでは1ポイントといわれており(Cancer 2015; 121: 3027-3035)、本試験では-0.84と近似した結果が得られている」と指摘。また同試験では、感度解析(BOCF解析)や副次評価項目においてもデュロキセチン群で優位性が示されたことから、同氏らは「臨床的な観点から、CNPに対してデュロキセチンの一定の効果が示されたと解釈できる」と報告した。

(髙田あや)

 

【DIRECT試験実施の背景は?】松岡弘道氏のコメント

心身両面のつらさを同時に解決できる可能性

 がん患者の多くは、不安・抑うつなどの精神症状に悩んでいることが知られているものの、主治医や看護師などの医療従事者に見落とされる頻度が極めて高いことが問題となっている。また、神経障害性疼痛も正しく診断されにくく、かつ難治性であることが報告されている。

 このような背景から、心身両面(不安・抑うつ、痛み)のつらさを同時に解決できる方法があれば、仮に精神症状を見落としていても、その部分をカバーできるのではないかと考えていた。2010年に日本でもデュロキセチンが使用可能となり、早速翌年にパイロット試験を行ってみたところ、比較的良好な結果が得られたので論文発表した(Anticancer Res 2012; 32: 1805-1809)。その後に報告されたエビデンスも踏まえ、オピオイド、ガバペンチノイド使用後の今回のデザインで多施設共同プラセボ対照ランダム化比較試験を行うこととなった。

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