がん治療の仕事への影響、「説明している」は4割

がん患者の就労支援における薬剤師の関わり、現状と課題が明らかに

がん患者の就労支援における薬剤師の関わりを調査した結果、治療内容や副作用が患者の仕事に与える影響を説明しているのは約4割であることが分かった。一方で、患者の仕事によっては、副作用への対処法を説明しても実行が困難であること、車の運転をせざるをえない患者にオピオイドなどが必要な場合はどのように説明していくかなど、課題も浮き彫りとなった。大垣市民病院(岐阜県)薬剤部長の吉村知哲氏が第16回日本臨床腫瘍学会(7月19~21日)で発表した。

約4割が治療内容や副作用が仕事に与える影響を説明

がん患者の就労支援に関し、現状では薬剤師は十分に関われていないと考えられることから、吉村氏らは薬剤師の役割を明らかにするため、アンケートによる現状調査を行った。49施設51人の薬剤師から回答が得られ、回答があった施設のうち42施設(86%)はがん診療連携拠点病院で、500床以上の施設が59%を占めた。回答した薬剤師は全員ががん専門薬剤師などの資格を有し、平均経験年数は16.9年だった。そのため調査の結果は、がん患者が多い施設で、がんに精通した薬剤師の関わり状況を示すものとなった。

まず、「患者の就労状況や職業を把握していますか」との問いに対し、「ほとんどしている」と回答したのは31.4%、「ほとんどしていない」は5.9%、「就労している患者の場合、具体的な仕事内容や勤務状況を聞いていますか」ではそれぞれ21.6%、23.5%となった。次に、「抗がん薬の治療(レジメン)内容・治療スケジュールを説明する際に、仕事や勤務などへの影響についても説明していますか」「抗がん薬の副作用を説明する際に、日常生活における影響や注意点に加え、仕事に与える影響なども説明していますか」に対しては、「ほとんどしている」はそれぞれ37.3%と39.2%、「ほとんどしていない」はいずれも13.7%となった。

「患者の副作用アセスメント・モニタリングをしていますか」には、「ほとんどしている」が74.5%、「一部している」が25.5%だった。また、患者から仕事についての悩みや相談をされた薬剤師は96.1%に上り、ほぼ全員が相談を受けていることが分かった。

副作用による仕事への影響と対処が課題

相談を受けた患者などから課題として多く挙げられたのは、副作用による仕事への影響だった。末梢神経障害は美容師や精密機械の修理担当者、陶芸家、調理師などの患者、脱毛・皮膚障害は営業職や接客業などの患者、味覚異常は調理師の患者、倦怠感は教師の患者、骨髄抑制は対面業務に携わる患者から、それぞれ相談が寄せられていた。

このような副作用への対処法を薬剤師が説明しても、仕事の内容によっては実行が難しく、現実的ではないケースも挙げられた。例えば、オキサリプラチンによる冷感誘発性神経障害の場合、冷たいものを避ける必要があるが、調理師や生鮮食品担当者では困難だ。手足症候群に対する保湿剤の塗布は調理師では難しく、革靴以外の履物の選択はビジネスマンでは難しい。

特に大きな課題となっているのが、仕事で車の運転が必要な患者に対し、どのように指導するかである。例えばオピオイドは、添付文書に「眠気、眩暈が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること」と記載されている。支持療法薬でも、末梢神経障害に処方されるプレガバリン、制吐薬のオランザピン、皮膚障害に対する抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬などに加え、止瀉薬のロペラミドなどには注意を要する。またさまざま抗がん薬でも、運転に注意が必要である。

がん治療と仕事の両立を意識した関わりを

90%以上の薬剤師ががん患者の就労支援における今後の関わりで「必要」としたのが、「患者の職業・勤務状況・仕事内容等の把握をした上で、治療(レジメン)内容・治療スケジュールを分かりやすく説明して理解を得る」「抗がん薬の副作用を説明する際に、日常生活における影響や注意点に加え、仕事に与える影響なども説明する」「患者の副作用発現状況を把握し、副作用マネジメントをする」だった。

副作用の伝え方は重要である。抗がん薬では、悪心・嘔吐、食欲不振、下痢などの一過性の副作用は、治療のどの時期にどの程度起こるか、起こった場合はどのように対処すればよいのかを伝えておく必要がある。一方、末梢神経障害や皮膚障害、脱毛、味覚異常などの持続性の副作用は、どの程度持続するのか、後遺症が残るのかなどを伝える必要がある。さらに経口抗がん薬では、副作用発現時に休薬するタイミングを伝えること、すぐに受診する必要がある症状を伝えておくことも重要になる。吉村氏は「患者は治療を続けようという意識が強いため、我慢し過ぎないよう伝えることも大切。薬剤師も、がん治療と仕事の両立を意識して患者と接する必要がある」と述べた。

 就労支援を考慮した薬剤師の関わりの中では、患者の就労状況と職業を確認した上で、治療内容や副作用が与える影響や後遺症、抗がん薬への曝露や車の運転に関する情報を提供し、副作用にはセルフケアを含めた対処法を説明するとともに、休薬や支持療法薬の提案などもしていく必要があるとしている()。

図.がん患者の就労支援を考慮した薬剤師の関わり

21495_fig1.png

(吉村知哲氏提供)

(JSMO 2018取材班)

コメント

Leave a comment

Your email address will not be published.


*