希少がんユーイング肉腫、発症メカニズムを解明

日加米英の国際共同研究

 国立がん研究センターは、カナダ・日本・英国・米国の4カ国から成る国際共同研究グループが小児・思春期・若年成人(AYA)世代に多く見られる希少がんの1つであるユーイング肉腫の発症メカニズムを解明したと発表した。また、ユーイング肉腫における再発腫瘍は原発巣が診断される1年以上も前から存在し、原発巣から枝分かれして進化していることも明らかになったという。研究の詳細はScience(2018年8月31日発行号)に掲載された。

AYA世代で多く発生

 ユーイング肉腫は骨や軟部組織に発生する肉腫で、小児に発生する骨腫瘍では骨肉腫に次いで2番目に多く、過半数が小児からAYA世代(15~39歳)に発症、日本の発症頻度は年間100例未満と推定される。

 集学的治療を行うことで遠隔転移がないユーイング肉腫の5年生存率は70%前後に向上したが、遠隔転移を有する場合の生存率は20%以下と低い。

 ユーイング肉腫ではEWS-FLI1EWS-ERGなどの融合遺伝子が主な原因と考えられているが、これまで発症や再発のメカニズムについてはほとんど解明されていなかった。

連環染色体断裂融合により発がん

 こうした中、同センター研究所がんゲノミクス研究分野分野長の柴田龍弘氏、同センター中央病院希少がんセンター病理科の吉田朗彦氏らが参加したカナダ・Hospital for Sick Childrenを中心とする4カ国国際共同研究では、ユーイング肉腫患者50例の検体(腫瘍・正常ペア)の全ゲノム解析を行い、染色体構造異常と体細胞変異を同定。さらに新たなデータ解析ツールを用い、染色体構造異常の相互関連について解析を行った。

 その結果、ユーイング肉腫患者の40%以上で連環染色体断裂融合(chromoplexy)によってEWS-FLI1EWS-ERGなどの融合遺伝子が形成されていることが明らかになった。

 連環染色体断裂融合は、複数の染色体構造異常がループ状に次々と連結していく複雑な異常形式で、発がんの比較的早期に生じ、ユーイング肉腫発生の引き金となる。また連環染色体断裂融合によって発生したユーイング肉腫は、それ以外の単純な分子機構で発生したものと比べてTP53遺伝子の異常が多く、有意に予後不良であることも分かった。

 連環染色体断裂融合によるゲノム異常は、ユーイング肉腫だけでなく、軟骨粘液線維腫、滑膜肉腫、リン酸塩尿性間葉系腫瘍などでも観察され、さまざまな肉腫の発生に関わる新たな分子機構であることが明らかになった。

再発腫瘍は原発巣診断1年前から存在

 さらにユーイング肉腫の再発メカニズムを解明するため、同一症例における原発巣と再発腫瘍の全ゲノム解析を行った。その結果、他の多くのがんでは原発巣と再発巣に共通のゲノム異常が多く認められるのに対し、ユーイング肉腫では原発巣と再発巣に共通する変異は50%程度で、原発巣における主要なクローンの多くが再発病変には見られないことが分かった。

 また、再発巣に由来するゲノム異常の発生時期を調べたところ、原発巣が診断される1~2年前には既に原発巣から枝分かれしたクローンが発生し、それらが原発巣切除後に増殖して再発病変を形成していると推測された。

 これらの結果から、ユーイング肉腫の再発では、リキッドバイオプシーなどによる早期診断や再発クローンの早期同定が予後改善に有用である可能性が示唆された。

 同センター中央病院希少がんセンターセンター長で骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長の川井章氏は「この研究は、代表的な希少がんであるユーイング肉腫の発生メカニズムの解明に国際共同研究で取り組んだもので、その成果は難治性ユーイング肉腫の新たな診断・治療法の開発に役立つことが期待される」と述べている。

 今後は、今回同定した新たな腫瘍発生メカニズムである連環染色体断裂融合がどのような環境要因や遺伝的要因などで誘発されるかを研究し、希少な肉腫の発生リスクの予測や予防につなげる予定だという。また、予後不良因子である腫瘍再発の早期診断を目指し、血液などを対象としたリキッドバイオプシーによるゲノム診断の有用性についてさらに検討していくという。

(大江 円)

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