養子免疫療法+免疫CP阻害薬で乳がん消失

 米国立がん研究所(NCI)のSteven A. Rosenberg氏らは、化学療法やホルモン療法に抵抗性を示す乳がん患者に対して養子免疫療法(ACT)と免疫チェックポイント(CP)阻害薬を組み合わせた治療を実施したところ、がんが完全に消失し、治療後22カ月以上にわたってその状態を維持したとNat Med 2018; 24: 724-730)で報告した。

TILを用いた新規の治療法

 近年、がんの免疫療法として、免疫CP阻害薬を用いた治療と、がんを攻撃する細胞を体外で増やして投与するACTが注目されている。このうちACTは、メラノーマや喫煙に起因した肺がんなど体細胞変異の頻度が高いがんには有効だが、体細胞変異の頻度が低い胃がん、食道がん、卵巣がん、乳がんでの有効性は低いと考えられている。現在進行中の第Ⅱ相試験でRosenberg氏らは、がん細胞の変異を標的として、変異の頻度が高い上皮がん患者のがんを退縮させる、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いたACTを開発している。

 今回報告された症例は、化学療法とホルモン療法に抵抗性を示す49歳のホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性(ER+HER2)転移性乳がん患者。同氏らは、患者の腫瘍と正常な組織の全エクソームシークエンシングとRNAシークエンシングを行い、がん細胞に特異的に認められる62の非同義的体細胞突然変異を同定。さらに患者のがん細胞に発現する4つの蛋白質(SLC3A2、KIAA0368、CADPS2、CTSB)の変異型に対して反応するTILを同定、これらのTILを大量に培養して患者に注射した。

 なお、患者にはTILの効果を増強するためにインターロイキン(IL)-2を投与したほか、腫瘍がTILを不活性化するプロセスを阻止するために抗PD-1抗体のペムブロリズマブも投与した。

 治療の結果、乳がん患者のがんは完全に消失し、治療から22カ月以上経過後もがんの再発は見られていない()。また、治療後17カ月の時点で血中にTILが確認されたとしている。

図. 治療前と治療14カ月後の乳がん患者のCTスキャン画像

Nat Med 2018; 24: 724-730)

 NCIのTom Misteli氏は「免疫療法の効果をあらためて見せつけた症例報告だ」とした上で、「今後、より大規模な研究で有効性が確認されれば、こうしたT細胞を用いた治療法を、さまざまな種類のがんにも広げていける可能性がある」と述べている。

 今回の臨床試験では、乳がん以外に肝がんや大腸がんなどの患者でも遺伝子変異を標的にしたTILによる治療の有効性が認められているという。

 Rosenberg氏は「これまで、体細胞変異の頻度が高いがん種と比べて、変異の頻度が低い上皮性の固形がんではACTが成功したことはなかった。しかし、われわれは免疫システムが認識するがんに発現する変異を同定するハイスループットスクリーニング法を開発した。これを利用した新規の治療法はまだ実験段階であるが、がん種別の治療ではなく、全てのがんが有する遺伝子変異を標的にする免疫療法であり、さまざまな種類のがんに対する共通の治療法になる可能性が示された」としている。

(岬りり子)

コメント

Leave a comment

Your email address will not be published.


*