PI3K阻害薬taselisib、進行乳がんの予後改善

ER陽性PIK3CA変異陽性例におけるフルベストラントとの併用投与:SANDPIPER

 PIK3CA変異を有するエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性の閉経後乳がん患者に対し、抗エストロゲン薬フルベストラントと選択的ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬であるtaselisib(GDC-0032)の併用効果を検討したSANDPIPER試験では、プラセボ併用と比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に延長したとの結果が示された。ただし、フルベストラントとtaselisibの併用例では忍容性の問題により試験薬の使用を中止した頻度が高かったという。米・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのJosé Baselga氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018、6月1~5日、シカゴ)で報告した。

ER陽性HER2陰性患者の40%にPIK3CA変異

 PI3Kのシグナル伝達は腫瘍の成長や増殖、生存に関与しており、PIK3CA変異があるとPI3K経路が活性化される可能性が指摘されている。特にER陽性HER2陰性の乳がん患者では、PIK3CA変異が最大で40%に認められるとの報告がある。こうした中、選択的PI3K阻害薬taselisibは、PIK3CA変異を有する乳がん細胞株における活性の増強や、PIK3CA変異を有する乳がん患者における高い抗腫瘍効果が認められている。

 今回、Baselga氏はtaselisibの第Ⅲ相試験SANDPIPER試験について報告した。対象は、2015年4月~17年9月にアジアや欧州、北米地域およびオーストラリアを含む28カ国149施設で登録されたER陽性HER2陰性で局所進行または転移性の閉経後の乳がん患者。組み入れ基準はアロマターゼ阻害薬による治療中または治療後に再発または進行が認められ、転移がんに対して施行した化学療法は1回以下で、フルベストラントやPI3K阻害薬、mTOR阻害薬による治療歴がない患者とした。

 主要評価項目は、PIK3CA変異を有する患者における臨床試験担当者の評価(investigator-assessed;INV)に基づいたPFS(INV-PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、臨床的有用性(CBR)、奏効期間(DOR)、盲検下独立中央評価(Blinded Independent Centralized Review;BICR)によるPFS(BICR-PFS)とした。また、探索的評価項目としてPIK3CA変異がない患者における同薬の有効性が設定された。

ORRやCBR、DORなども改善

 対象をPIK3CA変異の有無別にtaselisib(4mg/日)+フルベストラント(500mg/日)併用群(以下、taselisib群)または同量のプラセボ+フルベストラント併用群(以下、プラセボ群)に2:1でランダムに割り付けた。ランダム化の対象は631例(taselisib群417例、プラセボ群214例)で、このうちintention-to-treat(ITT)解析の対象となったPIK3CA変異陽性例は516例(それぞれ340例、176例)、安全性評価の対象は629例(同416例、213例)だった。ITT解析の対象となったPIK3CA陽性例の年齢中央値はtaselisib群が60歳(範囲32~84歳)、プラセボ群が61歳(同39~85歳)であった。

 試験の結果、主要評価項目であるPIK3CA変異陽性例におけるINV-PFS中央値は、プラセボ群の5.4カ月に対しtaselisib群では7.4カ月と有意な延長が認められた〔ハザード比(HR)0.70、P=0.0037、図1〕。

図1.主要評価項目:PIK3CA変異陽性例におけるINV-PFS

 また、BICR-PFS中央値もプラセボ群の5.4カ月に対しtaselisib群では9.0カ月と有意に長く、taselisib群におけるPFSの延長が確認された(同0.66、P=0.0023)。さらに、地域別に見たINV-PFSのHRはアジアで0.38、西欧・北米・オーストラリアで0.57であったが、コロンビアやメキシコなどの中南米およびロシアやブルガリアなどの東欧では1.18だった。

 この他、ベースライン時に測定可能な病変があった患者(taselisib群264例、プラセボ群134例)におけるORRやCBR、DORもプラセボ群と比べてtaselisib群で改善していた(ORR:11.9% vs. 28.0%、CBR:37.3% vs. 51.5%、DOR:7.2カ月 vs. 8.7カ月)。一方、OSはプラセボ群24.4%、taselisib群21.5%と報告されたが、データがimmatureだったとしている。

変異ない患者でも有効な可能性残す

 探索的評価項目であるPIK3CA変異陰性例における有効性に関しては、ベースライン時に測定可能な病変があった患者での奏効率がプラセボ群(35例)で14.3%、taselisib群(61例)で19.7%だった(P=0.37)。また、INV-PFSはプラセボ群(38例)で4.0カ月、taselisib群(77例)で5.6カ月だった(P=0.1062、図2)。

図2.探索的評価項目:PIK3CA変異陰性例におけるINV-PFS

(図1、2ともASCO2018発表データを基に編集部作成)

 安全性に関しては、グレード3以上の有害事象の発現率がプラセボ群の16.4%に対してtaselisib群では49.5%と高く、重篤な有害事象の発現率もプラセボ群の8.9%に対してtaselisib群では32.0%と高かった。taselisib群で特に高頻度に見られたグレード3以上の有害事象は下痢(11.5%)、高血糖(10.8%)などであった。また、有害事象による試験薬投与中止・中断例、減量例の割合も、プラセボ群よりtaselisib群で高かった(中止:2.3% vs. 16.8%、中断:11.3% vs. 40.6%、減量:2.3% vs. 36.5%)。

 以上の結果を踏まえ、Baselga氏は「フルベストラントとtaselisibを併用することで、PIK3CA変異のある乳がん患者におけるINV-PFSが有意に改善し、同様に副次評価項目のORRやCBR、DOR、BICR-PFSも改善が認められた。ただし、OSについてはデータがimmatureだった。また探索的な解析からは、PIK3CA変異陰性例に対してもtaselisibとフルベストラントの併用が有効である可能性が皆無ではないことが示された」と結論。一方、安全性プロファイルについては「予測通りだった」としているが、「忍容性の問題から試験薬の使用を中止する頻度が高かった。この問題が原因で臨床的な有益性が制限された可能性がある」との見解を示した。

(編集部)

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