【第2回】Oncotype DX®
早期乳がん患者の大部分が化学療法は不要

 〔編集部から〕Oncotype DX®は、遺伝子の網羅的解析によりがん患者の予後および治療効果を予測する多遺伝子アッセイ(多重遺伝子診断)である。同検査の登場により、乳がんの再発リスクを評価し、化学療法が省略可能かどうかを調べることができるようになった。佐々木氏に同検査の意義について展望してもらった。

中間リスク群では化学療法併用効果は認められず

 Oncotype DX®を用いたTAILORx試験の結果が、2018年7月12日付けのN Engl J Medに掲載された(2018; 379: 111-121)。同試験は、米国立がん研究所(NCI)の支援を受けたECOG-ACRINがん研究グループが独立して実施した、前向き第Ⅲ相ランダム化比較試験である。対象はホルモン受容体陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性の早期乳がん患者1万273例。追跡が可能であった9,719例のうち、Oncotype DX®で再発スコアが11~25の中間リスク群に振り分けられた6,711例(69%)を、ホルモン療法のみを行う群とホルモン療法+化学療法を併用する群に割り付けて治療した。その結果、両群で治療効果に全く差がないことが証明され、早期乳がん患者の多くで化学療法は必要ないことが示された。

遺伝子発現結果から再発スコアを算出

 Oncotype DX®であるが、16のがん遺伝子および5つの標準遺伝子から成る21遺伝子を乳がんの組織検体を用いてハイスループット逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法によって解析する検査である。

 21遺伝子の内訳は、がん細胞の増殖に関わる遺伝子としてKi-67Survivincyclin B1など、浸潤能に関してはCathepsin L2、ホルモン感受性に関してはERPRのほかにBcl2SCUBE 2、さらにHER2に関してはHER2およびGRB7を調べ、化学療法の効果と遠隔再発のリスクを定量的に評価し、乳がん患者1人1人の個別化治療の選択に貢献できるとされている。

 具体的には、乳がんの組織からRNAを抽出し、RT-PCR法により検出された遺伝子発現結果から再発スコア(10以下:低リスク群、11~25:中間リスク群、26以上:高リスク群)を算出するというものである。検体は、新鮮凍結検体またはホルマリン固定後パラフィン包埋組織(FFPE)で、検体からRNAを抽出し測定する。そのため病理部門などでのプレアナリシス(検査前)の品質管理が肝要であり、腫瘍組織採取後の固定までの時間や保管方法、用いる検体の腫瘍細胞比率などが重要となる。

定量的スコアがタモキシフェンの効果予測と深く関連

 もともとOncotype DX®は3件の臨床試験において乳がんに関連すると考えられていた250の遺伝子を解析し、この結果に基づき、乳がん遠隔再発との間に強い相関性が得られた16のがん遺伝子を選択している。同時にこれらのがん遺伝子の発現を正規化するための5つの標準遺伝子も特定した。

 さらにこれらの臨床試験の結果に基づき、多施設共同臨床試験(NSABP B-14)および米・Northern California Kaiser Permanenteの乳がん患者を対象とした大規模な症例対照試験が実施され、これらの結果はN Engl J Med2004; 351: 2817-2826)に掲載された。

 ERPR発現に関しては、通常は病理組織スライドガラス上で免疫組織化学(immunohistochemistry: IHC)を用いて、定性的(スコア化により半定量的)に行われている。RT-PCR法では、それぞれ3,000倍および1,000倍の範囲にわたるERおよびPRの遺伝子発現を連続的分布として測定することが可能となっている。このOncotype DX®によるERPRのRNA遺伝子発現と蛋白レベルでの免疫組織化学染色法(IHC)の発現は高度に一致していることが知られている。さらに、このOncotype DX®の定量的スコアに関しては、抗エストロゲン薬タモキシフェンの効果予測と深く関係しており(ERスコアが高いほどタモキシフェンが奏効)、治療決定に非常に有用であるとの結果も判明している。

わが国での保険収載が待たれる

 日本乳癌学会では、2016年および2018年の診療報酬改定において保険収載を求めて申請してきたが、いまだに認められていない。引き続き2020年の診療報酬改定でも学会からの要望として申請する予定である。

関連記事:21遺伝子アッセイで早期乳がんの過剰治療を回避

佐々木 毅(ささき たけし)

1989年、秋田大学医学部卒業後、東京大学病理学教室に入局。横浜市立大学病院などの勤務を経て、2013年から東京大学病院で勤務。2018年6月より現職。同大学病院ゲノム病理標準化センター/地域連携推進・遠隔病理診断センターセンター長、同大学(全学部横断)知能社会国際卓越大学院医療系人工知能開発担当を兼務。日本病理学会理事・社会保険委員長、日本乳癌学会保険診療委員会委員、外科保険連合会および内科保険連合会検査委員会委員なども務める。

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