21遺伝子アッセイで早期乳がんの過剰治療を回避

中間リスク群に対するOncotype Dxの効果予測を前向きに検証:TAILORx


 早期乳がんの転移・再発予防を目的として行われる術後化学療法は、乳がん患者の予後改善に寄与してきた。その一方で、化学療法が不要な症例に対する過剰治療の可能性も指摘されている。Oncotype Dx検査は、遺伝子の網羅的解析によりがん患者の予後および治療効果の予測を行う多遺伝子アッセイ(多重遺伝子診断)で、ランダム化比較試験の検体を用いて予後予測因子および術後化学療法の効果予測因子を後ろ向きに検証した唯一のアッセイとされる。ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性かつリンパ節転移陰性の早期乳がんを対象に、Oncotype Dxの有用性を検証した大規模なランダム化比較試験TAILORxの結果から、同検査で「中間リスク」と判断された症例では術後化学療法が省略し得ることが示された。米・Albert Einstein College of MedicineのJoseph A. Saparano氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018、6月1~5日、シカゴ)のプレナリーセッションで発表、N Engl J Med2018年6月3日オンライン版)に同時掲載された。

HR陽性HER2陰性かつリンパ節転移陰性が対象

 Oncotype Dx検査は、乳がん患者のホルマリン固定されたパラフィン包理腫瘍組織からRNAを抽出し、乳がん遠隔再発との間に統計的関連性が実証された16個のがん遺伝子と、5個の参照遺伝子で構成される21個の遺伝子を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で解析。その結果から0~100の再発スコア(Recurrence Score;RS)を算出し、低RS群、中間RS群、高RS群に分類する。

 TAILORx試験の対象は、HR陽性HER2陰性乳がんで①リンパ節転移陰性②RS 11~25(中間リスク)③腫瘍径 1.1~5.0cm(組織学的グレード分類で中間/高異型度の場合は0.6~1.0cm)―などの条件を満たした症例。HER2陽性例の多くはRSが高く、RSの分布も異なることから除外された。また、通常は中間RS群のスコアは18~30とされているが、同試験ではHER2陽性例を除外したことなどから、内分泌治療単独では治療が不十分になる可能性を最小化するため調整された。

 2006年4月~10年10月にOncotype Dx検査を受けた1万1,232例中1万273例を登録。そのうち、中間RS群と判定された6,711例を内分泌療法単独群(3,399例)と標準的な内分泌療法+化学療法併用群(3,312例)にランダムに割り付けた。低RS群(RS 0~10、1,629例)では内分泌療法単独を、高RS群(同26~100、1,389例)では内分泌療法+化学療法併用を施行した。

 主要評価項目は中間RS群における浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)。内分泌療法単独群の内分泌療法+化学療法併用群に対する非劣性が検証され、非劣性マージンはIDFSにおけるハザード比1.322未満に設定した。

内分泌療法単独群の内分泌療法+化学療法併用群に対する非劣性を証明

 有効性解析〔intention-to-treat(ITT)〕集団とされた中間RS群6,711例の年齢中央値は55歳、50歳以下が33%、腫瘍径1~2cmは63%、組織学的グレード分類で中間の異型度は57%、臨床的には低リスクが74%、高リスクが26%だった。

 内分泌療法については、閉経後の患者ではアロマターゼ阻害薬が90%、閉経前の患者では卵巣機能抑制薬が15%で用いられていた。化学療法の内訳は、ドセタキセル+シクロホスファミド併用(TC)療法が56%、アントラサイクリン系薬剤が36%であった。

 観察期間中央値7.5年(836件のIDFSイベント)におけるITT解析の結果、主要評価項目のIDFSにおいて、内分泌療法単独群の内分泌療法+化学療法併用群に対する非劣性が証明された(図左、ハザード比1.08、95%CI 0.94~1.24、P=0.26)。

図.TAILORx試験における中間RS群の主要評価項目と副次評価項目

(ASCO2018発表データを基に編集部作成)

 副次評価項目においても両群は同等であった。内分泌療法単独群の内分泌療法+化学療法併用群に対するハザード比は、遠隔無再発期間(DRFI)で1.10(95%CI 0.85~1.41、P=0.48、図右)、無再発期間(RFI)で1.11(95%CI 0.90~1.37、P=0.33)、全生存期間(OS)で0.99(95%CI 0.79~1.22、P=0.89)であった。

9年後のイベント発生率も両群で同等

 またランダム化後9年時点のイベント発生率は、中間RS群では遠隔転移率が5%で、評価項目であるIDFS(内分泌療法単独群83.3% vs. 内分泌療法+化学療法併用群84.3%)、DRFI(94.5% vs. 95.0%)、RFI(92.2% vs. 92.9%)、OS(93.9% vs. 93.8%)のいずれにおいても、両群の差は1%未満だった。

 一方、9年時点の低RS群、高RS群での遠隔転移率はそれぞれ3%、13%であった。

50歳以下、RS 16~25では化学療法併用が有用な可能性

 さらにTAILORx試験では、探索的な解析として中間RS群で化学療法を併用するベネフィットが得られる症例を同定するためのサブグループ解析が行われた。その結果、内分泌療法に化学療法を併用するベネフィットが得られる集団として、年齢が50歳以下およびRSが16~25のサブグループが抽出された。

 RSが16~25のグループではIDFSイベントが9%減少(うち遠隔転移は2%減少)していた。一方、RSが21~25のグループではIDFSイベントが6%減少しており、その内訳は主に遠隔転移だった。

(髙田あや)

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