口腔内の歯周病菌が大腸がん発生に関与

 横浜市立大学肝胆膵消化器病学内視鏡センター診療講師の日暮琢磨氏らは、大腸がん患者の患部組織と唾液から口腔常在菌の一種であるFusobacterium nucleatumF. nucleatum)を分離、解析したところ、患者の4割以上でがん組織と唾液に共通する菌株が存在したことをGut2018年6月22日オンライン版)で報告した。同氏は「この結果から、大腸がん組織中のF. nucleatumが口腔内に由来することが示唆された」と述べている。

口腔内のF. nucleatumが大腸がん組織へ移行

 近年、大腸がんの病態や予後にF. nucleatumが悪影響を及ぼすという報告が増え、注目されている。しかし、これまでヒトの腸内からF. nucleatumが検出されることは少なく、大腸がん組織におけるF. nucleatumの感染経路は不明だった。

 日暮氏らは、F. nucleatumが口腔内環境において優先菌種であることに着目し、口腔内に存在するF. nucleatumが大腸がん組織へ移行しているとの仮説を立てて検証を行った。

 同氏らは、大腸内視鏡検査で大腸がんと診断された84例のうち、1カ月以内の抗菌薬使用歴がないなどの条件を満たした患者14例(男性10例、女性4例、平均年齢69.4歳)を対象に、内視鏡を用いて採取した大腸がん組織および唾液検体からFusobacterium選択培地を用いて計1,351コロニーを分離、特異的プライマーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で361のF. nucleatumを検出した。

 その結果、8例で大腸がん組織および唾液の両方からF. nucleatumが検出された。さらに、これら8例から分離されたF. nucleatumをarbitrarily primed PCR(AP-PCR)法を用いて菌株レベルで解析したところ、6例において大腸がん組織および唾液の両方から同一菌株が検出された。

 以上から、同氏は「F. nucleatumは健康人の多くが口腔内に保有する常在菌の一種であり、歯周病の悪化にも関与することが報告されており、近年では大腸がん悪化への関与が強く疑われることも報告されている。今回の研究の結果、口腔内と大腸がん組織におけるF. nucleatumの菌株が一致したことから、口腔内のF. nucleatumが大腸がん組織に移行、感染していることが示唆された」と結論した。

 さらに「詳細な移行・感染ルートの解明は今後の課題であるが、今回得られた知見により、口腔内や腸内の細菌を調べることで大腸がんの簡便な診断法を開発できる可能性や、口腔内、腸内細菌を制御することが大腸がんの治療や予防につながる可能性が示唆された。今後は分子生物学的手法も取り入れて、より多くの大腸がん患者を対象に研究を進めて行く予定だ」と展望した。

(大江 円)

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