PPI+アスピリンでバレット食道の転帰改善

大規模第Ⅲ相ランダム化比較試験

 高用量のプロトンポンプ阻害薬(PPI)のエソメプラゾールとアスピリンの併用投与は、食道腺がんの危険因子であるバレット食道の患者において、全死亡、食道腺がん、高度異形成が発生するまでの期間を有意かつ安全に延長させる。英・Morecambe Bay University Hospitals NHS Foundation TrustのJausz A.Z. Jankowski氏らは、2×2ファクトリアルデザインで検討した第Ⅲ相ランダム化比較試験AspECTの結果をLancet2018; 392: 400-408)で発表した。

バレット食道でPPIとアスピリンの効果を評価する初のRCT

 食道腺がんは北米や欧州で発生頻度が高く、主な危険因子はバレット食道である。バレット食道の発生には胃食道逆流症(GERD)が関連するとされ、下部食道で持続的な炎症が起こると、扁平上皮が円柱上皮に置き換わりバレット食道となる。

 バレット食道では、食道腺がんへの進行を予防する治療戦略が効果的と考えられる。PPIは酸逆流を効果的に減少させ、バレット食道が発生しても、発がんに関与するとされるシクロオキシゲナーゼ-2の発現を抑制する。また、PPIのエソメプラゾールはバレット食道のクローン増殖を促進しないこと、アスピリンは食道腺がんのリスクを減らす可能性があることが報告されている。

 ただし、バレット食道の患者を対象に、PPIとアスピリンの併用投与によるがんへの進行予防効果を評価したランダム化比較試験はこれまでなかった。そこでJankowski氏らは、これらの薬剤の有効性と安全性を評価するため、第Ⅲ相ランダム化比較試験AspECTを実施した。

 対象は、2005年3月10日~09年3月1日に英国の84施設とカナダの1施設において病理組織所見で食道に1cm以上の円柱上皮が認められたバレット食道患者2,557例で、新たに診断された患者と既知の患者の両方を組み入れた。ベースラインで食道腺がんまたは高度異形成がある患者、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を服用している患者は除外した。

 エソメプラゾールは、高用量(40mgカプセルを1日2回)または低用量(20mgカプセルを1日1回)で投与し、アスピリンは標準的な用量(英国:300mg/日、カナダ:325mg/日)での投与とした。

 投与はオープンラベルで行い、患者を①低用量のエソメプラゾールのみを投与する群(705例、低用量PPI群)②高用量のエソプラメゾールのみを投与する群(704例、高用量PPI群)③低用量のエソメプラゾールとアスピリンを併用する群(571例、低用量PPI+アスピリン群)④高用量のエソメプラゾールとアスピリンを併用する群(577例、高用量PPI+アスピリン群)―4群にランダムに割り付けた。

 追跡のための受診は年1回とし、1、3、5、7、9年目には面談または電話インタビューを行い、2、4、6、8、10年目には内視鏡検査を行った。

 主要目的は、高用量PPIと低用量PPIの有効性、アスピリンの投与と非投与の有効性を比較することとした。主要複合評価項目は、全死亡、食道腺がん、高度異形成のいずれかが最初に発生するまでの期間とした。時間比(TR)が1を超えた場合、治療によりイベント発生までの期間が延長したと見なした。

高用量PPI+アスピリンで最も高い効果

 中央値8.9年〔四分位範囲(IQR)8.2~9.8年〕の追跡期間中に、主要複合評価項目である全死亡、食道腺がん、高度異形成が313件発生し、2万95人・年のデータが収集された。

 有効性解析〔intention-to-treat(ITT)〕対象におけるPPIの主要解析では、高用量PPI(1,270例で139件のイベント)の低用量PPI(1,265例で174件のイベント)に対する効果は有意に高かった(TR 1.27、95%CI 1.01~1.58、P=0.038)。

 アスピリンの主要解析では、投与(1,138例で127件のイベント)と非投与(1,142例で154件のイベント)に有意差はなかった(TR 1.24、95%CI 0.98~1.57、P=0.068)。ただし、患者がNSAIDの同時併用を開始した時点で追跡を中止すると、アスピリン投与は非投与に対して有意な効果が認められた(同1.29、1.01~1.66、P=0.043)。

 PPIとアスピリンの併用で効果が増強することも示された。高用量PPI+アスピリン群(572例で52件のイベント)と低用量PPI群(699例で99件のイベント)で最も差が大きかった(TR 1.59、95%CI 1.14~2.23、P=0.0068)。また、高用量PPI+アスピリン群と高用量PPI群(698例で87件のイベント)の効果に有意差は認められなかったものの(同1.38、0.98~1.94、P=0.0680)、信頼区間から効果を裏付ける可能性が示された。

 安全性については、試験治療に関連するグレード3~5の重篤な有害事象は28例(1%)に発生したのみだった。

 Jankowski氏らは「高用量PPIとアスピリンの併用は、バレット食道患者の転帰を有意かつ安全に改善する」とし、英国と北米の現行ガイドラインを再検討する必要性を示唆している。

(森下紀代美)

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