転移性腎がんへの腎摘除術の意義示されず

 転移性腎がんに対して、腎摘除術後にマルチキナーゼ阻害薬スニチニブを投与する群と腎摘除術を行わずにスニチニブ単独で治療を行う群の有効性を比較したオープンラベルの国際多施設共同第Ⅲ相ランダム化比較試験CARMENAの結果から、腎摘除術を行わなくても予後に影響を及ぼさないことが示された。フランス・Hôpital européen Georges-PompidouのArnaud Mejean氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018、6月1~5日、シカゴ)のプレナリーセッションで発表、N Engl J Med2018年6月3日オンライン版)に同時掲載された。

2回目の中間解析で試験中止に

 転移巣を有する腎がん患者に対する腎摘除術は、過去約20年間にわたり標準治療とされてきた。一方、転移性腎がんを対象とした多くの分子標的治療薬の開発が進み、臨床導入されている。しかし、転移性腎細胞がんを対象に、腎摘除術と分子標的治療薬の有用性を直接前向きに比較した研究はなかった。

 CARMENA試験の対象は、①組織学的に淡明細胞がんを確認②全身状態(ECOG PS)0/1③脳転移が認められない、あるいは脳転移に対する治療後3週間以上再発が認められない④腎がんの治療歴がない―などの条件を満たした患者である。2009年9月~17年9月に欧州4カ国(フランス、英国、ノルウェー、スウェーデン)の79施設において登録された450例を、腎摘除術後にスニチニブを投与する群(226例、腎摘除術施行群)と腎摘除術を行わずにスニチニブ単独で治療する群(224例、スニチニブ単独群)に1:1でランダムに割り付けた。スニチニブは1日1回50mgを4週間連日投与した後、2週間休薬。腎摘除術施行群では、腎摘除術施行後3~6週時にスニチニブを投与した。

 主要評価項目は全生存期間(OS)で、スニチニブ単独群の腎摘除術施行群に対する非劣性を検証した。ハザード比(HR)の95%CI上限の非劣性マージンは1.20と設定した。

 2017年9月9日に326例の死亡が認められた時点をカットオフとして2回目の中間解析が行われた。OSの結果に基づき、治験委員会は試験中止を決定し、この解析を最終解析とした。

 両群の患者背景は同様で、腎摘除術施行群とスニチニブ単独群でそれぞれ、年齢中央値(範囲)は63歳(33~84歳)、62歳(30~87歳)、男性は両群とも75%、予後予測のためのMemorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)分類における中リスクは56%、59%、低リスクは44%、41%だった。また原発巣の腫瘍径の中央値は88mm、86mm、転移巣の個数は両群とも2個、転移部位は肺が最も多く79%、73%だった。

OSにおける非劣性を証明

 中央値で50.9カ月(範囲0.0~86.6カ月)の追跡期間における有効性解析(intention-to-treat;ITT)の結果、主要評価項目のOSは、スニチニブ単独群の腎摘除術施行群に対するHRが0.89(95%CI 0.71~1.10)となり、事前に設定された非劣性マージンを下回り、スニチニブ単独治療の非劣性が証明された()。OS中央値は、腎摘除術施行群の13.9カ月(95%CI 11.8~18.3カ月)に対し、スニチニブ単独群では18.4カ月(同14.7~23.0カ月)だった。

図.全生存期間(ITT解析集団)

(ASCO2018発表データを基に編集部作成)

 無増悪生存期間(PFS)中央値は、腎摘除術施行群の7.2カ月(95%CI 6.5~8.5カ月)に対し、スニチニブ単独群では8.3カ月(同6.2~9.9カ月)だった(HR 0.82、同0.67~1.00)。

臨床有用率はスニチニブ単独群で有意に高い

 奏効率は、腎摘除術施行群が27.4%、スニチニブ単独群が29.1%と両群で同様だった。一方、病勢制御率は腎摘除術施行群の61.8%に対し、スニチニブ単独群では74.6%と高い傾向にあった。さらに臨床有用率(12週を超えた病勢制御)は腎摘除術施行群の36.6%に対し、スニチニブ単独群では47.9%と有意(P=0.022)に高かった。

 スニチニブ投与に関連するグレード3/4の有害事象は、腎摘除術施行群33%、スニチニブ単独群43%で認められ、最も高頻度だったのは無力症(それぞれ9%、10%)だった。

 スニチニブ単独群では、原発巣に対する緊急手術として、あるいは転移巣で完全寛解(CR)またはCRに近い状態が認められたため38例(17.0%)で腎摘除術が行われていた。これら腎摘除術が施行された症例のうち、約3割の患者でスニチニブの投与が再開されていた。

 これらの結果から、Mejean氏は「もはや転移性腎がんに対する腎摘除術は、標準治療とすべきではない」と結論した。

免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法の有効性も

 この結果について、ディスカッサントの米・Duke Cancer InstituteのDaniel George氏は「CAEMENA試験の対象はMSKCC分類で低リスクの患者が4割を占め、PSも良好であることに注意が必要である」と指摘。さらに同試験のデザインは非劣性の証明であることから、その解釈は慎重でなければならないとしながらも、「CARMENA試験の対象と同様の患者背景の集団に対しては、まず薬物療法を行うべきだ」との見解を示した。

 さらに同氏は、転移巣の腫瘍量が少ない転移性腎がんに対しては、スニチニブ投与から始めた後に、地固め療法として手術を行う可能性も示唆した。

 なお転移性腎がんに対しては、わが国では2016年8月に免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体ニボルマブの単剤投与が承認されている。またニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法の有効性も示されており、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブがニボルマブ+イピリムマブ併用療法について、今年(2018年)1月に根治切除不能または転移性の腎がんに対する一部変更承認申請を行っている。

(髙田あや)

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