C型肝炎、DAA治療後の肝発がん予防に亜鉛

第54回日本肝臓学会レポート

 C型肝炎患者ではインターフェロン(IFN)フリー直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療により高いウイルス学的著効(SVR)達成率が得られるようになった。しかし、ウイルスの排除により肝細胞がんリスクが改善するか否か、またSVR達成率後の危険因子などは明らかにされていない。大阪労災病院(堺市)消化器内科肝臓内科部長の法水淳氏は、IFNフリーDAA投与によりSVRが得られた後の肝発がんと亜鉛の影響について検討。「血中亜鉛濃度が肝発がんと関連しており、亜鉛製剤の投与がSVR達成後の発がんを抑制できる可能性が示された」と第54回日本肝臓学会(6月14〜15日)で報告した。

DAA投与12週後の亜鉛低値がリスク

 亜鉛は肝臓におけるさまざまな酵素の活性に必須であるが、その血中濃度は肝疾患の進行に伴い徐々に低下する。法水氏らは以前、慢性肝疾患における亜鉛投与が肝発がんのリスクを低減することを報告している。今回はSVR達成後に限って、DAA投与によるSVR達成後発がんと血中亜鉛濃度の関係、および亜鉛製剤の投与がSVR達成後発がんにどのような効果をもたらすかを明らかにすることを目的に2件の後ろ向き研究を行った。

 まず同氏らは、DAAを投与しSVRを達成したC型肝炎患者497例(ゲノタイプ2型105例、男性221例、平均年齢66.2歳)のうち肝がん既往がなく、亜鉛製剤を服用していない患者425例(男性187例、平均年齢65.4歳)を対象に、発がん率とその危険因子について検討。DAAによる治療はいずれの薬剤でもSVR12達成率は90%を超えており、効果は良好であった。

 肝がん既往がないSVR達成後発がんに関しては、1年発がん率は0.24%、2年発がん率が5.05%であった。単変量解析では、肝がん既往がないDAA治療後の肝発がんリスクとして、DAA投与前の血小板低値(8万μL未満)とDAA投与12週後の亜鉛低値(70μg/dL未満)が抽出された。さらに多変量解析では、12週後の亜鉛低値のみが残った。

高値群では2年後まで発がんなし

 そこで、法水氏らは血中亜鉛濃度に注目し、発がん群、非発がん群におけるDAAの投与前後4週ごとの亜鉛濃度を検討した。その結果、ほぼ全ての時点で非発がん群と比べて発がん群で有意に亜鉛濃度が低かった。また、亜鉛濃度は非発がん群では経時的に緩やかな上昇が認められたが、発がん群では低値のままであった。

 さらに、DAA投与12週後の血中亜鉛濃度を①低値群(70μg/dL未満)②中等値群(70μg/dL以上90μg/dL未満)③高値群(90μg/dL以上)−の3群に分けて、発がん率の検討を行った。その結果、低値群では1年発がん率が0.59%、2年発がん率が9.8%と他の2群に比べて有意に高かった(中等値群0%、2.4%、高値群0%、0%)。

DAA投与12週後の亜鉛低値がリスク

 次に、亜鉛製剤投与群(41例)と非投与群(425例)での肝発がん率について比較検討した。亜鉛投与群と非投与群では臨床的背景に有意差はなかったが、亜鉛投与群がやや高齢で血小板低値である傾向が見られた。亜鉛投与群の症例が少なく、発がん症例も少ないため有意差は付いていないが、非投与群は1年発がん率が0.24%、2年発がん率が5.05%であったのに対し、亜鉛投与群ではいずれも0%という結果であった。

 法水氏は「今回の研究では、亜鉛濃度が肝発がんと関連しており、亜鉛製剤の投与がSVR達成後の発がんを抑制できる可能性が示された。発がん高リスク群の同定が重要となるが、亜鉛血中濃度がマーカーであると同時に、亜鉛濃度低値の症例に対して亜鉛製剤を投与することによって、肝発がんを積極的に抑制することができる可能性があるという点でも重要な知見といえる」と結論した。

(慶野 永)

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