進行肝がんに有望な温熱併用療法

ドキソルビシン封入温度感受性リポソーム+温熱療法の第I相試験

 

 化学療法に不応の進行肝がんに対するドキソルビシン(LTLD)封入温度感受性リポソームと集束超音波療法(FUS)を併用した温熱療法は、臨床で実施可能であり、安全で、腫瘍内への薬物送達が増強する可能性がある。英・Oxford University Hospitals NHS Foundation TrustのPaul C. Lyon氏らは、オープンラベル単施設第Ⅰ相試験TARDOXの結果をLancet Oncol2018年7月9日オンライン版)で発表した。

39.5℃で搭載された薬物を放出

 全身化学療法の大きな課題は、正常組織に毒性を引き起こすことなく、有効な用量の薬剤を腫瘍に送達することである。前臨床研究では、治療薬を封入した温度感受性リポソームを投与後に、温熱により治療薬を放出させることにより、腫瘍内の薬物の濃度と分布が増大し、治療効果が改善することが示されている。しかし、このような効果は臨床では証明されていない。

 LTLDには、39.5℃で搭載された薬物を放出するという特性がある。またLTLDは肝細胞がんの治療としてラジオ波焼灼療法との併用が検討されているが、まだ結論は得られていない。

 そこでLyon氏らは、非侵襲的で、体内の深部に正確に標的を絞り、軽度の温熱を発生させることができるFUSをLTLDと併用した場合の安全性と実現可能性を評価する非盲検、単施設の第Ⅰ相試験TARDOXを実施した。

 対象は、病理学的に確認された治癒不能な原発性または転移性の肝がん患者で、組織型は問わず、従来の化学療法で増悪または安定状態にあること、腫瘍径1cm以上の腫瘍が1個以上あることとした。過去12カ月間に標的病変に対しラジオ波焼灼療法を受けた患者、ドキソルビシンの生涯投与量が450mg/m2を超える患者などは除外した。各患者において超音波検査により標的とする腫瘍を1個選択した。

 今回の試験は2つのパートに分かれており、パートⅠでは標的腫瘍に温度を測定するデバイスを一時的に埋め込み、FUS施行中のデータをリアルタイムで得るとともに、腫瘍内の薬物濃度を推定するため、デバイスの埋め込みに用いた同心針電極からLTLDの投与前後とFUS後に生検を行った。パートⅡではデバイスの埋め込みは行わず、この治療を実地臨床で非侵襲的に行うためのデータを得て、生検はFUS後のみに行った。

 治療は全身麻酔下で行い、LTLD(50mg/m2)は単回投与で30分かけて静脈注射した後、FUSを用いて選択した腫瘍内に39.5℃以上の熱を誘発した。治療前日と治療後2、4週目にCT、MRI、18F-FDG(フルデオキシグルコース)PET-CTを行い、治療後は血液検査も実施した。

 追跡期間は30日間。有害事象は有害事象共通用語規準(CTCAE)v4.0を用いて評価した。

 主要評価項目は、FUS施行後に治療を行った患者の半数以上で腫瘍内のドキソルビシン濃度が2倍以上になること、または最終的な濃度が10μg/gを超えることとした。

腫瘍内ドキソルビシン濃度が3.7倍に上昇

 2015年3月13日~17年3月27日に適格性の評価を46例が受け、適格基準を満たした10例が治療を受けた。追跡期間の中央値は29.5日だった。パートⅠに6例、パートⅡに4例が割り付けられた。原発性肝がんの他、大腸がん、乳がん、肺がんからの肝転移の患者が含まれた。

 全10例の腫瘍内ドキソルビシン濃度は、LTLDの投与とFUSを行った後に平均8.56μg/gとなり、パートⅠの患者で測定したLTLDの投与直後の平均2.34μg/gと比べて3.7倍に上昇した。10例中7例(70%)で約2~10倍の上昇が認められ、主要評価項目は達成された。

予測範囲内の有害事象

 有害事象は、グレード4の好中球減少症が5例(50%)に発現したが、予測された範囲の事象だった。予測外の有害事象として、1例にグレード1の錯乱が発現したが、LTLDとFUSには関連しないとみられた。また、グレード3の好中球減少症と貧血が各1例(各10%)に発現した。FUSによる皮膚の熱傷や標的以外の組織の損傷は観察されなかった。治療関連死は発生していない。 

 これらの結果から、Lyon氏らは「標準治療に難治性の肝がんに対し、LTLDとFUSの併用は臨床で実施可能であり、安全で、腫瘍内の薬物送達を増強すると考えられる」とした。

 この結果について、米・Medical University of South CarolinaのDieter Haemmerich氏は同誌の付随論評(2018年7月9日オンライン版)で「ドキソルビシンは抗腫瘍スペクトラムが広いため、LTLDとFUSの併用は他の固形腫瘍にも広く適用できる可能性がある。最近米国で開始された第Ⅰ相試験では、さまざまな難治性の固形腫瘍の小児患者を対象にLTLDとFUSの併用が検討されている」とコメントしている。

(森下紀代美)

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