EGFR変異陽性の未治療非小細胞肺がん、TKI+化学療法でOS中央値は52.2カ月

ゲフィチニブ+化学療法でOSを有意に延長:国内第Ⅲ相試験NEJ009

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する一次治療において、標準治療薬の1つであるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)ゲフィチニブと化学療法の併用効果を検討した国内第Ⅲ相ランダム化比較試験NEJ009の結果、ゲフィチニブ単独投与に比べてゲフィチニブ+化学療法併用群は全生存期間(OS)を有意に延長し、OS中央値は52.2カ月と極めて優れた成績が示された。仙台厚生病院呼吸器内科医長の中村敦氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018、6月1~5日、シカゴ)で発表した。

初回からEGFR-TKIと化学療法を同時併用することで予後改善を期待

 EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCの一次治療においては、EGFR-TKIの単独投与が標準治療となっており、後治療として化学療法を行うことでより長期の生存が可能と考えられている。しかし実際には、EGFR-TKIによる一次治療後、プラチナ製剤ベースの化学療法が行われている患者は約70%にすぎないことが報告されている(N Engl J Med 2010 24; 362: 2380-2388)。

 一方、EGFR遺伝子変異陽性の進行非扁平上皮NSCLCの一次治療において、ゲフィチニブと化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)の併用投与法および交代投与法の有効性と安全性を検証した第Ⅱ相試験NEJ005の結果から、ゲフィチニブ+化学療法の治療成績は有望で、かつ交代投与法よりも併用投与法の方がより予後良好であること、副作用は忍容できることが示された(Ann Oncol 2013; 24: 54-59)。そのため、一次治療からEGFR-TKIと化学療法を併用することでOSの改善が期待された。

主要評価項目はPFS1、PFS2、OSの複合

 NEJ009試験では、国内47施設で2011年10月~14年9月に登録された①非扁平上皮NSCLC②未治療③ⅢB/Ⅳ期あるいは術後再発④20~75歳⑤全身状態(PS)0~1⑥EGFR遺伝子変異陽性―などの条件を満たした患者345例を、ゲフィチニブ+化学療法群(170例)とゲフィチニブ群(172例)に1:1でランダムに割り付け、比較検証された。

 ゲフィチニブ+化学療法群では、導入療法としてゲフィチニブ(連日投与)+カルボプラチン+ペメトレキセド(3週ごと、4~6サイクル)の併用療法後、維持療法としてゲフィチニブ(連日投与)+ペメトレキセド(3週ごと)併用療法を病勢進行(PD)が認められるまで施行した。ゲフィチニブ群では、ゲフィチニブ単剤をPDが認められるまで連日投与し、PD後はプラチナ製剤を含む化学療法が推奨された。

 主要評価項目は当初はOSのみとされていたが、試験開始後に第三世代EGFR-TKIであるオシメルチニブや免疫チェックポイント阻害薬が登場したことから、2016年2月にプロトコルを変更。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)1、PFS2、OSの3つが再設定された。PFS2が評価項目に加えられたのは、ゲフィチニブと化学療法を併用することで、ゲフィチニブ単剤+後治療よりも治療期間の延長が期待されたためである。

 ここで注意すべきは、PFS1とPFS2の定義である。すなわち、ゲフィチニブ群では、最初のPD(PD1)を認めるまでの無増悪生存期間がPFS1、PD1後の後治療(二次治療)において認められた2回目のPD(PD2)までの無増悪期間をPFS2とした。一方、ゲフィチニブ+化学療法群では、導入療法としてゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を開始後にPD1が認められるまでの期間をPFS1(=PFS2)とした。

 主要評価項目は、PFS1→PFS2→OSを連続的に評価するprespecified hierarchical sequential testingという統計方法が用いられた。

 両群の患者背景は同様で、ゲフィチニブ群、ゲフィチニブ+化学療法群でそれぞれ、年齢中央値は64.1歳、64.8歳、男性は37.2%、32.9%、喫煙歴は75%、73%、脳転移ありは22.1%、29.6%だった。

PFS1は有意に延長、PFS2は両群で差なし

 試験の結果、PFS1中央値はゲフィチニブ群の11.2カ月(95%CI 9.0~13.4カ月)に対し、ゲフィチニブ+化学療法群では20.9カ月(同18.0~24.0カ月)と有意な延長が認められた〔ハザード比(HR)0.494、95%CI 0.391~0.625、P<0.001〕。奏効率も、ゲフィチニブ群67.4%に対し、ゲフィチニブ+化学療法群では84.0%と有意に高かった。

 治療期間中央値(範囲)は、ゲフィチニブ群の348日(29~2,123日)に対し、ゲフィチニブ+化学療法群では672日(14~1,794日)と長かった。中村氏は「この両群の治療期間の違いがPFS1の差につながっていると考えられる」と考察した。

 一方、PFS2については両群ではなかった。PFS2中央値はゲフィチニブ群20.7カ月(95%CI 17.9~24.9カ月)、ゲフィチニブ+化学療法群が20.9カ月(同18.0~24.0カ月)だった(HR 0.966、95%CI 0.766~1.220、P=0.774)。

 PDが認められた時点での臨床状態を比較すると、PD1時点でのPSや転移個数などは両群で同様であった。一方、ゲフィチニブ群のPD2時点とゲフィチニブ+化学療法群のPD1時点を比べると、PSや転移個数はゲフィチニブ群でより不良な傾向が認められた()。

表.PD1およびPD2が認められた時点での臨床状態

PFSはOSのサロゲートマーカーとして有効

 OS中央値はゲフィチニブ群の38.8カ月(95%CI 31.1~50.8カ月)に対し、ゲフィチニブ+化学療法群では52.2カ月(44.0カ月~未到達)と有意な延長が認められた(HR 0.695、95%CI 0.520~0.927、P=0.013、)。

図.全生存期間

(表、図ともASCO2018発表データを基に編集部作成)

 PD1後の生存期間は、ゲフィチニブ群で23.0カ月(95%CI 17.4~29.6カ月)、ゲフィチニブ+化学療法群で19.3カ月(同15.9~39.6カ月)と差はなかった(HR 1.037、95%CI 0.771~1.394、P=0.812)。この結果について、中村氏は「ゲフィチニブ群では多くの患者が、PD1を認めた後にプラチナ製剤を含む化学療法を受けていたにもかかわらず、PD1後の生存期間は両群で同様だった。このことは、OSはPFS1と相関しているが、PFS2とは相関していないことを示唆している」と考察。「PFS1はOSの有効なサロゲートマーカーになりうる」との考えを示した。

有害事象は化学療法併用群で血液毒性が高頻度

 グレード3~5の有害事象の発現率はゲフィチニブ群の31.4%に対し、ゲフィチニブ+化学療法群では65.1%と高かった。副作用による治療中止の割合は両群とも約10%だった。肺臓炎は、ゲフィチニブ群で2例(1.2%)、ゲフィチニブ+化学療法群で3例(1.8%)に認められた。

 グレード3以上の血液毒性は、ゲフィチニブ+化学療法群で好中球減少(31.4%)、貧血(21.3%)、血小板減少(17.2%)などが高頻度に認められたが、既報と同様であった。

 これらの結果から、中村氏は「進行EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの一次治療において、ゲフィチニブとカルボプラチン+ペメトレキセドを同時併用することで、PFSおよびOSが改善され、かつ毒性は管理可能な範囲であった。ゲフィチニブ+化学療法は進行EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの一次治療において、有望な治療選択肢となりうる」と結論した。

(髙田あや)

中村敦氏のコメント

「1つの治療効果をより継続させる併用療法」に期待

 EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対する初回治療については、幾つもの薬や試験の成績が発表されており、どの治療が患者にとって最もメリットがあるのか悩ましくなっている。その中で、本試験はOSが中央値で52.2カ月と有意な延長を示した。この結果は、「併用による深い奏効」と「負担が少なく、有効な維持療法」がもたらしたものと考える。PDを繰り返すことで患者の体力を消耗してしまうので、1つの治療効果をより長く継続させる併用療法は、今後期待される治療方法の1つと考える。

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