切除不能Ⅲ期非小細胞肺がんの維持療法に抗PD-L1抗体が承認



 免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名イミフィンジ)が今月(2018年7月)2日、「切除不能な局所進行の非小細胞肺がん(NSCLC)における根治的化学放射線療法後の維持療法」を効果・効能として承認された。NSCLC治療においては、Ⅳ期の患者に対する画期的な新薬が相次いで登場していたが、Ⅲ期の患者では約20年間標準治療に進展がなかった。今回のデュルバルマブは、Ⅲ期の患者を適応とした承認となる。7月23日に東京都で開かれた記者発表会(主催=アストラゼネカ)では、近畿大学内科学腫瘍内科部門教授の中川和彦氏が「同薬承認により、肺がん治療は極めて重要な転換期を迎えた」と述べ、臨床に与えるインパクトなどについて解説した。

約20年間標準治療に進展がなかった切除不能Ⅲ期NSCLC

 わが国ではⅣ期のNSCLCに対して、既に抗PD-1抗体のニボルマブ、ペムブロリズマブ、抗PD-L1抗体のアテゾリズマブが承認されている。

 一方、Ⅲ期の切除不能な局所進行NSCLCに対しては、2000年ごろから根治を目的とした同時化学放射線療法(CRT)が標準治療とされてきたものの、9割近くの患者でCRT施行後に病勢進行、転移が認められる、5年生存率は20%ほどであるという。そうした中で今回、Ⅲ期の切除不能NSCLCに対するCRT施行後の維持療法において、新たな治療薬かつ初の免疫チェックポイント阻害薬としてデュルバルマブが約20年ぶりに承認された。

 同薬の有効性については、CRT施行後に病勢進行が認められなかったⅢ期NSCLC患者713例(日本人112例)を対象に維持療法としての有効性・安全性を検証した第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験PACIFICの中間解析の結果、主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)の大幅な延長が示された(関連記事:「抗PD-L1抗体が肺がん維持療法でも予後改善」、「DurvalumabでQOLを維持したままPFSを延長」、N Engl J Med 2017; 377: 1919-1929)。PFS中央値はプラセボ群の5.6カ月に対し、デュルバルマブ群では16.8カ月であった(ハザード比0.52、95%CI 0.42~0.65、P<0.001)。日本人集団のサブセット解析でも同様の効果が認められている。

化学放射線療法後はデュルバルマブがより効きやすい環境に

 CRT施行後にデュルバルマブを投与する意義について、中川氏は「CRTにより、デュルバルマブの効果が得られやすい環境が整っている」ことを挙げた。すなわち、放射線治療を行うとがん細胞が破壊され、がん微小環境に炎症反応を引き起こすが、同時に免疫原性細胞死(immunogenic cell death;ICD)を誘導して抗腫瘍免疫を活性化(腫瘍周辺に活性化T細胞を増加)させる。一方、活性化T細胞が分泌するサイトカインは腫瘍細胞のPD-L1発現を亢進させることから、活性化T細胞によるがん細胞への攻撃が抑制されてしまう。ここに抗PD-L1抗体である同薬を投与すると抗腫瘍免疫反応が回復し、がんの排除が促されるという。

 また、Ⅲ期はⅣ期より腫瘍ボリュームが少ない状況にあるが、腫瘍量が少ない方が免疫チェックポイント阻害薬の効果は高いことが報告されている。同氏は「CRTによってさらに腫瘍ボリュームが減少していることから、デュルバルマブの効果が得られやすい環境になっているのではないか」と考察した。

重篤な肺臓炎の発症リスクは増加せず

 また中川氏は「CRTで最も気を付けなければならないのは肺臓炎の発症である」と指摘した。照射野外で肺臓炎が生じると、致死率は50%ほどに高まるという。

 前述のPACIFIC試験における有害事象の評価において、放射線肺臓炎と薬剤性肺臓炎の発症がプラセボ群では全グレードで15.4%と7.7%、グレード3以上は0.9%と3.0%であったのに対し、デュルバルマブ群ではそれぞれ20.2%と12.6%、1.7%と2.5%だった。同氏は「最も危惧されていた放射線肺臓炎や薬剤性肺臓炎がデュルバルマブ群では増強されなかった。特に重篤なものはあまり認められなかった。そのため、今回の承認に当たり厚生労働省から全例調査が義務付けられていない」と報告した。

 なお、同試験におけるもう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)については、同社が今春に「OSにおいても主要評価項目を達成した」とのリリースを発表しているが、具体的な成績は報告されていない。詳細は今秋の国際学会で報告される予定であるという。同氏は「OSの結果についても注目する必要がある」と述べた。

治療成績の大幅な改善を期待

 さらに中川氏は、Ⅲ期のNSCLC治療においてデュルバルマブが登場した意義について、「Ⅳ期のNSCLC治療において抗PD-1抗体のニボルマブやペムブロリズマブが登場し、治療が移行したとき以上のインパクトがある」と考察。Ⅲ期NSCLCの治癒率の向上や生存期間の延長など、治療成績の大幅な改善が期待されるとした。「今後は、Ⅲ期NSCLCの維持療法以外での併用(放射線治療との同時併用など)のタイミングや抗CTLA-4抗体などの併用薬の追加に関する検討により、よりいっそうの治療成績の改善が期待される」との見解を示した。

 アストラゼネカは、同薬について、薬価収載前日までの薬剤無償提供を全国45施設において行うとしている。

(髙田あや)

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