腸内細菌叢ががん免疫療法の効果に関連か

日本人患者で検証、治療効果を予測できる可能性

免疫チェックポイント阻害薬の効果は、腸内細菌叢により修飾されることがマウスモデルで報告されている(Science 2015; 350: 1079-1084同誌1084-1089)が、ヒトでは実証されていない。国立がん研究センター先端医療開発センターの福岡聖大氏らは、日本人の肺がんおよび胃がん患者における腸内細菌叢と抗PD-1抗体との相関を検証。その結果、腸内細菌叢の多様性が高いと抗PD-1抗体の効果が増強されることが示唆された点などを米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018、6月1~5日、シカゴ)で報告した。

対象は抗PD-1抗体の治療歴がある肺・胃がんの日本人患者

 福岡氏らは、日本人で非小細胞肺がん(NSCLC)および胃がんに対し抗PD-1抗体による治療を受けた患者を対象に、腸内細菌叢と抗PD-1抗体の治療効果との関連を検討した。

 まず同氏らは、2017年3~11月に抗PD-1抗体による治療を受けたNSCLC患者36例と胃がん患者14例の糞便からDNAを抽出し、16SリボソームRNAメタゲノム解析を行った。

 さらに、対象患者をRECIST基準により部分奏効(PR)または少なくとも6カ月以上の安定(SD)が認められた群(11例:Responder、以下R群)と、病勢進行が認められたあるいはSDが6カ月以内だった群(39例:Non Responder、以下NR群)に分けた。

 患者背景は、R群とNR群でそれぞれ、年齢中央値(四分位範囲)が68(53~80)歳、68(40~85)歳、男性が9例(82%)、32例(82%)、全身状態(ECOG PS)0/1が64%/36%、51%/41%、PD-L1陽性率は100%、80%と、有意差は認められなかった。

 胃がんはR群では6例(55%)で、腸型(intestinal)が33%、びまん型(diffuse)が67%。NR群では30例(77%)で、それぞれ46%、54%だった。

 NSCLCはR群では5例(45%)で、扁平上皮型が20%、非扁平上皮型が80%。NR群では9例(23%)で、それぞれ22%、78%だった。

奏効が認められた患者では多様性が高い

 主座標分析を用いてR群とNR群の細菌構成の違いを検討した結果、両群に有意差が認められた(ANOSIM、P=0.018)。

 次にShannon indexを用いて腸内細菌叢の多様性を評価したところ、NR群に比べてR群では有意に高い多様性が示された(P=0.0016、Mann-Whitney検定)。R群ではRuminococcaceae科が優勢であり、NR群ではBacteroides属が優勢だった。

Bacteroides属の割合が高い患者では予後が不良

 さらに福岡氏らは、対象を腸内細菌叢の多様性が高いグループ(High diversity群)と低いグループ(Low diversity群)に分け、無増悪生存期間(PFS)を比較した。その結果、PFS中央値はLow diversity群の37日(95%CI 21~53日)に対し、High diversity群では105日(同69~140日)と有意(P=0.003)に長かった。すなわち、腸内細菌叢の多様性が高い患者群では、抗PD-1抗体の治療効果がより高いことが示された。

 またNR群で優勢だったBacteroides属の割合が高い患者では、低い患者に比べて、有意に予後不良だった。

今後はマウスモデルを用いた便移植で検証

 さらに多変量解析では、PFSに関与する因子として腸内細菌の多様性(High diversity/Low diversity)が抽出された(ハザード比0.254、95%CI 0.120~0.536、P=0.0003)。

 これらの結果から、福岡氏らは「腸内細菌叢の多様性により、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測しえる。また固形がんの患者において、腸内細菌叢の多様性が高いと免疫チェックポイント阻害薬の効果が増強されることが示唆された」と結論した。今後は、R群とNR群の便を無菌マウスモデルにそれぞれ移植し、抗PD-1抗体の治療効果との相関を検証する予定であるという。

(髙田あや)

福岡氏のコメント

「多角的に患者ごとの免疫状態を評価することが重要」

 腸内細菌と免疫チェックポイント阻害薬の相関に関する報告が相次いでいるが、人種差や地域差を考慮する必要がある。本報告は、日本人の腸内細菌と治療効果の相関を検討した点で意義のあるものと考える。今回、相関を見いだした菌がどのようにがん免疫応答に関わっているのか、そのメカニズムについて解明していく必要がある。

 現在、免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカー候補として臨床で簡便に行うことができるものはPD-L1の発現解析であるが、臨床効果が高い患者を推測できるものの、完全に臨床効果の有無を層別化できるバイオマーカーではない。がんに対する免疫応答には複数の因子が関与しており、PD-L1など単一の因子のみで臨床効果を予測するのは困難と考えられる。複雑な系を評価する上で、Blankらが提唱した”Cancer Immunogram”のような多角的に患者ごとの免疫状態を評価することが重要と考えられる。本報告から、腸内細菌叢もその一角を担う可能性が示唆された。がん免疫応答を評価する最適なツールを検討していくことが、治療効果の予測・増強につながっていくと考えられる。

 

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