第三世代のEGFR-TKIを用いた肺がん治療戦略


オシメルチニブの治療シークエンスには改善の余地

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、第三世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるオシメルチニブ以外のEGFR-TKIを一次治療で使用した場合、オシメルチニブによる一次治療と同等の無増悪生存期間(PFS、PFS2)を得るためには、二次治療で患者の60%にオシメルチニブを投与するか、一次治療でPFSを14カ月以上得る必要があり、検討の余地がある可能性が示された。静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科医長の釼持広知氏がシミレーションを用いた治療シークエンスの検討について、第16回日本臨床腫瘍学会(7月19~21日)で発表した。

第三世代のEGFR-TKIで承認されているのはオシメルチニブのみ

 第三世代のEGFR-TKIは、EGFRの感受性遺伝子変異と耐性変異であるT790M変異の両方を有するNSCLCに対し効果が期待できる薬剤として複数が開発されているが、現在承認されているのはオシメルチニブのみである。

 オシメルチニブは、二次治療としての効果をプラチナ製剤+ペメトレキセドと比較した第Ⅲ相のAURA3試験で有用性が示された。この結果から、オシメルチニブはEGFR-TKI既治療でT790M変異陽性のNSCLCに対する標準治療薬となっている。さらに、一次治療として同薬を評価した第Ⅲ相のFLAURA試験でも、ゲフィチニブまたはエルロチニブと比べて主要評価項目である無増悪生存期間の延長で有意差が得られたことが報告されている(関連記事:「EGFR変異陽性肺がんにパラダイムシフトか」「米・オシメルチニブが肺がんの一次治療薬に」)。

より効果的な一次治療が登場するかどうかが鍵に

 これまでに得られたデータでは、一次治療でオシメルチニブを投与した場合のPFS中央値は約18~19カ月、第一・第二世代のEGFR-TKIを投与した場合は約10カ月と報告されている。EGFR-TKIを投与後、患者の約40%はT790M変異陽性となり、これらの患者にオシメルチニブを投与した場合、さらに約10カ月のPFSが期待できる。

 釼持氏らは、EGFR-TKIとオシメルチニブの治療シークエンスにおいて、どの程度の患者に二次治療でオシメルチニブが投与できれば一次治療で同薬を単剤投与した場合と同等以上のPFSが得られるのかについてシミュレーションを行った。

 シミュレーションにはMonte Carlo法を用いて、一次治療のEGFR-TKI投与によるPFSの長さをT1、T790M変異陽性例のオシメルチニブ投与によるPFSの長さをT2(10カ月と固定)、二次治療でオシメルチニブの投与が可能な患者の割合をBとした。PFS2=T1+B×T2とし、乱数は擬似患者1,000万例とした。

 その結果、EGFR-TKIを投与した後、60%の患者にオシメルチニブが投与された場合に、一次治療で同薬を単独投与した場合と同等のPFSが得られることが示された。

 ここで疑問となるのは、実際に60%の患者にオシメルチニブを投与することが可能かという点だ。日本で行われたREMEDY試験では、最大の解析対象集団(FAS)236例のうち、再生検が行われたのは86.9%、T790M変異が検出されたのは25.8%、オシメルチニブが投与されたのは23.7%だった(Kanai K, et al. ELCC 2018 Abstract No.141PD)。

 釼持氏らの施設でも以前、同様の検討を後ろ向きに行っている。EGFR遺伝子変異陽性のNSCLC患者139例のうち、EGFR-TKIを投与後に再生検が行われたのは75例、このうちT790M変異陽性は20例(14%)だった(Cancer Sci 2016; 107: 1001-1005)。また、実際に再生検が可能だった患者131例の後ろ向きの検討では、T790M変異陽性例は44%となった(Clin Lung Cancer 2018; 19: e247-e252)。

 T790M変異陽性例に対するオシメルチニブ投与で55.1%の奏効率が示された第Ⅱ相のWJOG8815L/LPS試験では、リキッドバイオプシーを行った276例のうち、T790M変異陽性は74例(26.8%)となっている(Takahama T, et al. JSMO 2018 Abstract No.SPS-4)。

 これらの結果から、同氏は「一次治療で第一・二世代EGFR-TKIを投与し、再生検でT790M変異が検出され、二次治療としてオシメルチニブが投与できるのは実際には10~30%と考えられる」と考察。

 さらにシミュレーションでは、EGFR-TKIによる一次治療でPFS中央値が14カ月以上となれば、オシメルチニブによる一次治療のPFSに匹敵することも示された()。

図.第三世代のEGFR-TKIを用いたEGFR遺伝子変異陽性NSCLCの治療シークエンス

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(釼持広知氏提供)

 同氏は「シミュレーションデータではあるが、より効果的な一次治療が登場すれば、その後でオシメルチニブを使う治療戦略に検討の余地があると考える」と述べた(関連記事:「肺がんの『最適な治療シークエンス』とは」)。

オシメルチニブへの上乗せ効果、脳転移への効果も検証

 オシメルチニブは毒性が軽度であることも利点の1つであり、治療成績の向上を目指す上では、同薬への上乗せ効果を求めることで患者の負担を軽減できる可能性がある。

 そこで釼持氏らは、非扁平上皮NSCLCでEGFR遺伝子変異陽性の患者に対する一次治療として、オシメルチニブ単剤とオシメルチニブ+ベバシズマブ併用を比較する第Ⅱ相ランダム化比較試験WJOG9717L試験を進めている。主要評価項目はPFSである。

 また、オシメルチニブは脳転移に対する有効性も示唆されていることから、EGFR-TKI既治療でT790M変異陽性かつ放射線未治療の脳転移を有する患者を対象として、オシメルチニブの効果を検討する第Ⅱ相のLOGIK1063/WJOG9116L試験が現在進行中である。

 さらに第三世代のEGFR-TKIについては、既に耐性機構の検討も行われており、第四世代のEGFR-TKIの開発も進められている。

 最後に同氏は「毒性、脳転移への効果も考慮すると、近い将来、オシメルチニブ単剤がEGFR遺伝子変異陽性のNSCLCに対する標準的な一次治療になるのではないか」と述べた。

(JSMO 2018取材班)

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