【解説】抗PD-1抗体+化学療法の意義


〔編集部から〕免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)について、非扁平上皮の非小細胞肺がん(NSCLC)の一次治療において、化学療法との併用の有効性を検証した第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験KEYNOTE-189の結果から、化学療法単独に比べて全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)がいずれも有意に延長したことが今月報告された(関連記事:「キイトルーダ、肺がんの一次治療で新展開」)。がん免疫療法がまさに激動の時代を迎えている中で、同試験の結果は今後の実臨床にどのような影響をもたらすのか。また化学療法と抗PD-1抗体を併用する意義とはどのようなものか。国立がん研究センター中央病院先端医療科の北野滋久氏に解説してもらった。

併用療法が初回治療の標準治療に

 KEYNOTE-189試験(NCT02578680)により、転移性の非扁平上皮非小細胞肺がん〔上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異あるいはALK遺伝子転座変異が認められない〕の初回治療において化学療法+ペムブロリズマブ併用群(ぺムブロリズマブ併用群)が化学療法+プラセボ群(化学療法群)に対して主要評価項目であるOS、PFSにおいて圧倒的な有意差を持って延長を示したインパクトは大きく、初回治療における標準治療となるであろう。

 本試験の意義として、第一に扁平上皮がんは含まれないものの、腫瘍におけるPD-L1の発現割合にかかわらず、ペムブロリズマブ併用群が化学療法群に対して有意にOSの延長を示したことである。副作用とのバランを考慮しても、より多くの患者に恩恵をもたらすことが期待される。

免疫学的に「相乗的」に働いている可能性を示唆

 本試験においてペムブロリズマブ併用群では、プラチナ製剤とペメトレキセドを3週間隔で4回投与後も、ペメトレキセドについては原則的に継続して併用される。免疫チェックポイント阻害薬はTリンパ球を中心とする免疫系の細胞を活性化してがんを攻撃する治療薬である。一方、化学療法は骨髄抑制を来し、免疫系細胞を疲弊させると考えられる。しかし、本試験における化学療法は3週間隔で行われるため、一過性に骨髄抑制を生じるものの、次回投与の直前には骨髄抑制からリンパ球をはじめとする免疫系の細胞は回復してきており、「増殖期」に入っている。「短期的」には化学療法の間欠投与と免疫チェックポイント阻害薬をタイミングよく併用すれば、免疫チェックポイント阻害薬単剤療法と比べてリンパ球をはじめとする免疫系の細胞の活性化と増殖をより賦活化できるのかもしれない。

 ただし、「長期的」には化学療法の併用を続けることにより骨髄が疲弊し、造血能や各種の免疫細胞の機能が低下していくことは避けられないと考えられる。そのため、臨床的にはどれくらいの期間、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用すべきかについては今後の重要な検討課題となろう。

 化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用効果については、異なる作用機序の薬剤が単に細胞傷害において相加的に働いているだけでなく、免疫学的に「相乗的」に働いている可能性が示唆され、詳細な機序の科学的解明が待たれる。

併用による長期生存成績については今後の結果が待たれる

 一方、局所進行または転移性非小細胞肺がん(EGFR変異あるいはALK変異が認められない)に対するペムブロリズマブ「単剤療法」については、KEYNOTE-024試験(NCT02142738)においてPD-L1高発現群(50%以上)の一次治療としてペムブロリズマブ単剤投与がプラチナ系抗がん薬2剤併用療法に比べてOSを統計学的に有意に延長することが示され、実地臨床に導入されている。

 さらに今月(2018年4月)9日には、KEYNOTE-042試験(NCT02220894)においてPD-L1発現率1%以上の低発現群でも、一次治療としてペムブロリズマブ単剤投与がプラチナ系抗がん薬2剤併用療法に比べてOSを統計学的に有意に延長したと開発元からプレスリリースされている。

 KEYNOTE-189試験のように化学療法と免疫療法の併用を長期的に継続することが、一次治療として免疫チェックポイント阻害薬単剤投与から開始することよりも長期(5年や10年)生存率の改善に寄与するかどうかについては今後の結果を待つ必要があろう。

 既に、非小細胞肺がんを含めて複数のがん腫において免疫チェックポイント阻害薬の開発の中心は単剤療法から併用療法の時代へと変革してきている。本試験の結果は今後の臨床開発に大きな影響を与えることであろう。

コメント

Leave a comment

Your email address will not be published.


*