【解説】未治療肺がんへの免疫療法併用の意義

〔編集部から〕本日(2018年6月1日)から5日まで、米国・シカゴでがん領域における世界最大の国際学会である米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)が開催される。今回、肺がん領域での注目トピックスの1つが、既にわが国では既治療の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対し臨床導入されている免疫チェックポイント阻害薬について、未治療例(一次治療)でどのように用いるかという問題である(ASCO 2018の詳報は後日掲載予定)。未治療の進行NSCLCに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性および安全性については、単剤療法、化学療法との併用療法、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法など、さまざまな治療法で検討されており、有望な結果も続々と報告されている。その1つが、対象を有力なバイオマーカーの1つとされるTumor Mutation Burden(TMB)が高レベルなNSCLC患者に絞り、いずれも免疫チェックポイント阻害薬である抗CTLA-4抗体イピリムマブと抗PD-1抗体ニボルマブの併用投与(いわゆる”イピニボ”)を検討したオープンラベルの第Ⅲ相ランダム化比較試験CheckMate-227の結果である。同試験では、イピリムマブ+ニボルマブ併用投与により、化学療法群に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に延長したことが示された(関連記事:「”イピニボ”が高TMBの未治療肺がんで奏効」)。NSCLCの初回治療において、化学療法を行わず、免疫チェックポイント阻害薬を併用する意義とはどのようなものか。国立がん研究センター中央病院先端医療科の北野滋久氏に解説してもらった。

一次治療として化学療法を使わなくてもよい患者群が存在か

 CheckMate-227試験(NCT02477826)は、前治療のない転移性(病期Ⅳ)または再発非小細胞肺がん患者〔上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異あるいはALK遺伝子転座変異を認めない〕を対象に、ニボルマブを含むレジメンとプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法(以下、化学療法)を比較評価した非盲検第Ⅲ相ランダム化比較試験であり、3つのパート(パート1a, 1b, 2)から構成されている。このうち、先日の第109回米国がん研究協会(AACR 2018、4月14~18日、シカゴ)では、ニボルマブ+イピリムマブ併用による免疫療法と化学療法を比較した部分のデータが報告された。用量・用法は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群ではニボルマブ3mg/kgを2週ごと、イピリムマブ1mg/kgを6週ごとに投与。化学療法は、組織型に基づいてプラチナ製剤を含む2剤併用療法が投与された。

 また本試験の主要評価項目は、①TMBが高レベル(10変異/メガベース以上)患者における、ニボルマブ+イピリムマブ併用群と化学療法群との比較によるPFS②PD-L1陽性(1%以上)例における、ニボルマブ+イピリムマブ併用群と化学療法群との比較による全生存期間(OS)―の2つが設定された。 

 TMBが高レベルの患者に対象を絞り込んだとはいえ、NSCLCに対する初回治療において、「免疫療法のみ」の併用療法(ニボルマブ+イピリムマブ)群が、長年初回標準治療として用いられてきたプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法群に比べて、PFSにおいて大きな有意差を持って延長を示した意義は大きいと考えられる。本研究の結果によって、①一次治療として化学療法を使わなくてもよい患者群が存在することが示唆される②二次治療以降の有効な選択肢として化学療法を温存しておくことができる可能性―が示されたといえよう。

用量・用法が異なる点に注意を

 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法についての解釈においては、先行して開発された悪性黒色腫(2018年5月25日国内承認)、腎細胞がん(国内承認申請中)と用法・用量が異なる点に注意が必要である。

 開発が先行している2つのがん種での推奨用量・投与方法は、①進行悪性黒色腫ではイピリムマブ3mg/kgを3週ごとに4回まで②進行腎細胞がんではニボルマブ3mg/kgを2週ごと、イピリムマブ1mg/kgを3週ごとに4回まで―と用量は異なるものの、いずれもイピリムマブの投与方法は「3週間隔で4回まで」となっている。基礎研究の成果を受けて、CTLA-4阻害薬は抗腫瘍免疫応答(cancer immunity cycle)の中でも、主に初期の段階に当たるプライミング期(ナイーブなT細胞に対してがん抗原特異的な刺激を与える時期)に寄与するものと考えられ、早期試験の段階において、臨床効果・毒性面・T細胞を中心とする免疫応答などが総合的に検討され、治療開始から連続的に投与できる「3週間隔で4回まで」という投与方法が採用されてきた。しかしながら、進行期の非小細胞肺がんに対する本併用療法の開発においては、早期試験の結果から、”低用量のイピリムマブ1mg/kg、6週ごと連続投与”が採用されたことは大変興味深い(なおニボルマブについては、NSCLCでの二次治療以降で単剤での承認用量は1回3mg/kgを2週間間隔で投与とされている)。この方法で投与されることが、「長期的」な予後改善に寄与するのか否かについては重要なポイントになるかもしれない。がん種ごとに異なる投与方法については、いずれの投与方法が長期的な体内のがん抗原特異的なメモリーT細胞のプールの増殖・維持に寄与するかについても検証の余地があろう。

コホートによりTMB高レベルのカットオフ値が異なる問題も

 TMBは、これまでの報告で有力なバイオマーカーの1つになることが期待されてきた。本解析におけるTMBの測定には、米食品医薬品局(FDA)が承認した検査法である「FoundationOne CDx」が用いられており、10変異/メガベース以上をTMB「高レベル」と定義している(関連記事:「【解説】がん遺伝子解析の革新」)。しかしながら、カットオフ値である「10変異/メガベース以上」については流動的なものであると考えられる。本試験においても、コホートによりTMBのカットオフ値が異なることは問題点として挙げられる。今後、各測定装置間でのデータの違いの検証、人種差、対象疾患・病期、介入する治療など、各種のバリデーションが必要であろう。

現在開発中の各種治療における長期生存率の結果が待たれる

 現時点において本試験のOSのデータが発表されていないことには留意が必要である。また、本試験のように免疫チェックポイント阻害薬を2剤併用することが、一次治療として免疫チェックポイント阻害薬単剤投与、もしくはKEYNOTE-189試験で示されるような免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用療法から開始するよりも、長期生存率(5年や10年)の延長に寄与するかについては今後の結果が注目される。

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