ROS1/TRK阻害薬entrectinibで深く持続的な奏効

ROS1陽性肺がん、脳転移にも高い効果

 ROS1/トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬entrectinibの有効性と安全性を評価した3件の第Ⅰ/Ⅱ相試験の統合解析から、ROS1融合遺伝子陽性(ROS1陽性)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、entrectinibは臨床的に意義のある深い奏効をもたらし、持続的な効果を発揮することが示された。また、有害事象の多くは減量や投与の中断で管理可能だった。米・University ColoradoのRobert C. Doebele氏が第19回世界肺癌学会議(WCLC 2018、9月23~26日、トロント)で報告した。

3試験の肺がん患者を統合解析

 Entrectinibは、ROS1融合遺伝子、NTRK融合遺伝子、ALK融合遺伝子を強力かつ選択的に阻害する経口のチロシンキナーゼ阻害薬。前臨床試験では、クリゾチニブよりも強力なROS1阻害作用を有することが示された。またentrectinibは血液脳関門を透過し、中枢神経系にとどまるよう設計されており、原発性脳腫瘍と中枢神経系(CNS)転移に対する抗腫瘍効果が示されている。

 現在、ROS1陽性の進行NSCLCに対する標準治療はクリゾチニブである。しかし、クリゾチニブが投与されたROS1陽性NSCLC患者では、最初の増悪としてCNS転移が多く認められる。そのため、ROS1陽性の腫瘍を有する患者ではCNSを透過するROS1阻害薬の使用により、ベネフィットが得られる可能性がある。

 今回報告されたのは、entrectinibの3件の第Ⅰ/Ⅱ相試験から、ROS1陽性NSCLCでROS1阻害薬の投与歴がない患者53例の統合解析を行った結果。これらの試験では、NTRK 1/2/3、ROS1、ALKの遺伝子再構成を有する局所進行または再発の固形腫瘍の患者を対象にentrectinibの有効性と安全性を評価していた。

 3試験のうち、最も多い37例のデータを収集したのがSTARTRK-2試験だった。同試験は国際多施設共同第II相バスケット試験で、entrectinib 600mgを1日1回、28日を1サイクルとして投与した。第Ⅰ相の用量漸増試験であるSTARTRK-1試験からは7例、ALKA-372-001試験からは9例のデータがそれぞれ収集された。主要評価項目は奏効率および奏効期間、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、頭蓋内奏効率、奏効期間、安全性、忍容性だった。有効性解析集団はROS1陽性NSCLC患者53例、安全性解析は3件の臨床試験でentrectinibが投与された355例(全てのがん種と遺伝子再構成を含む)とした。

奏効率は約8割に

 53例のベースラインの患者背景は、年齢中央値が53歳(範囲27~73歳)、女性が64.2%、アジア人が35.8%、白人が58.5%、ECOG PS 2が11.3%、非喫煙者が58.5%、喫煙歴あり/現喫煙者は41.5%だった。腺がんが76.1%を占め、前治療の治療ライン数は0が13.2%、1~2が39.7%、3以上が47.1%だった。ベースラインでCNS転移を認めたのは23例(43.4%)だった。

 2018年5月31日をデータカットオフ日とし、追跡期間中央値は15.5カ月であった。盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率は、全体では77.4%〔95%CI 63.8~87.7%〕、ベースラインでCNS転移を認めた患者では73.9%(同51.6~89.8%)、CNS転移がなかった患者では80.0%(同61.4~92.3%)と、有意差は見られなかった()。完全奏効(CR)が得られたのは全体で3例(5.7%)だった。

図.奏効率(BICRによる評価)

(WCLC 2018発表データを基に編集部作成)

 また、entrectinibの奏効は持続することも示された。奏効期間中央値は、全体では24.6カ月(95%CI 11.4~34.8カ月)、ベースラインでCNS転移を認めた患者では12.6カ月〔同6.5カ月~評価不能(NE)〕、CNS転移を認めなかった患者では24.6カ月(同11.4~34.8カ月)だった。

 PFS中央値は、全体では19.0カ月、ベースラインでCNS転移を認めた患者では13.6カ月、CNSを認めなかった患者では26.3カ月であった。OSはイベント数が少なく、中央値はNEだった。

 ベースラインでCNS転移を認め、BICRによる評価が可能だった20例における頭蓋内奏効率は55%で、頭蓋内CRは4例(20.0%)で得られた。これらの奏効も持続的であり、頭蓋内奏効期間中央値は12.9カ月であった。

 安全性については、ほとんどの有害事象はグレード1/2で可逆性だった。試験治療中止につながった有害事象は3.9%と低く、多くは減量や中断で管理可能だった。減量につながったのは27.3%、中断につながったのは25.4%だった。重篤なものは8.5%で発現したが、グレード5は見られなかった。

 今回の結果について、Doebele氏は「entrectinibを投与したROS1陽性NSCLC患者において、臨床的に意義のある深い奏効が持続的に得られ、この結果はCNS転移の有無にかかわらず認められた」と結論した。

(WCLC 2018取材班)

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