Ⅲ期切除不能非小細胞肺がんの維持療法、デュルバルマブで死亡リスクが32%減少

 免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-L1抗体デュルバルマブについて、化学放射線療法施行後に進行が認められなかったⅢ期(局所進行性)の切除不能非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、維持療法としての有効性・安全性を検証した第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験PACIFICの結果から、既報に比べ有意な無増悪生存期間(PFS)の延長に加えて、全生存期間(OS)でも有意な延長が認められ、死亡リスクは32%減少したことが示された。米・H. Lee Moffitt Cancer Center and Research InstituteのScott J. Antonia氏が第19回世界肺癌学会議(WCLC 2018、9月23~26日、トロント)で発表。結果はN Engl J Med2018年9月25日オンライン版)に同時掲載された。

日本では今年7月に承認

 Ⅲ期の切除不能局所進行NSCLCに対する標準治療は、2000年ごろからプラチナ製剤をベースとした同時化学放射線療法(CRT)とされてきた。しかし、5年生存率は15〜30%ほどにすぎず、多くの患者でCRT施行後に病勢進行、転移が認められる。そのため、新たな治療法の開発が求められていたが、なかなか有効な治療法が確立されない状況にあった。

 そのような中、昨年(2017年)9月に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2017)では、PACIFIC試験の中間解析の結果から、PFSの有意な延長が認められたことが報告され、大きな注目を集めた(関連記事:「抗PD-L1抗体が肺がん維持療法でも予後改善」「Ⅲ期肺がん維持療法に抗PD-L1抗体が導入」)。この結果を受け、わが国では今年7月、デュルバルマブが「切除不能な局所進行のNSCLCにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」を効果・効能として承認された。

ハザード比はOSで0.68、アップデートされたPFSでは0.51

 PACIFIC試験では、プラチナ製剤を用いたCRTを2サイクル以上施行後に進行が認められなかったⅢ期NSCLCで18歳以上の全身状態(WHO PS)が0/1の患者を対象に、維持療法としてのデュルバルマブ(10mg/kgを2週ごとに最高12カ月間静注)の有効性および安全性について、プラセボを対照として比較検討された。主要評価項目は、盲検下独立中央判定委員会が評価したPFSとOSである。同試験には米国、カナダ、欧州、中南米、日本、韓国、台湾、南アフリカ、オーストラリアなど26カ国・地域の235施設が参加した。なお、PD-L1の発現状況は問わず患者が登録された。

 2014年5月~16年4月に登録された713例を、デュルバルマブによる維持療法を受ける群(476例)とプラセボ群(237例)に2:1でランダムに割り付けた。

 2018年3月22日をデータカットオフ日(299イベント発生)とした有効性解析(intention-to-treat;ITT)集団における解析の結果、OS中央値はプラセボ群の28.7カ月〔95%CI 22.9カ月~未到達(NR)〕に対し、デュルバルマブ群ではNR(同34.7カ月~NR)と有意な延長が認められた〔ハザード比(HR)0.68、99.73%CI 0.469~0.997、P=0.00251、図1〕。OSは試験開始後12カ月時でデュルバルマブ群83.1%、プラセボ群75.3%、24カ月時でそれぞれ66.3%、55.6%であった。

図1.有効性解析ITT集団における全生存期間(OS)

 またアップデートされたPFS中央値は、プラセボ群の5.6カ月(95%CI 4.6~7.7カ月)に対し、デュルバルマブ群では17.2カ月 (同13.1~ 23.9カ月)だった(HR 0.51、95%CI 0.41~0.63、図2)。PFSは、試験開始後12カ月時でデュルバルマブ群55.7%、プラセボ群34.4%、18カ月時でそれぞれ49.5%、26.7%であった。

図2.ITTにおける無増悪生存期間(PFS)のアップデート(盲検下独立判定)

(図1、2ともWCLC 2018発表データを基に編集部作成)

 これらの主要評価項目におけるプラセボ群に対するデュルバルマブ群の優位性は、ランダム化時の年齢や性、喫煙状況、上皮成長因子受容体(EGFR)の変異状況などによるサブグループ解析においていずれも同様に認められた。CRTに用いられた化学療法薬別に見ると、シスプラチンを用いた集団では、カルボプチンを用いた集団に比べてデュルバルマブ群の優位性が高い傾向を認めた。

OSはPD-L1の発現が1%未満ではプラセボ群が優位な傾向に

 また同試験の登録基準では、PD-L1の発現状況の測定は必須でなかったため、患者の37%で発現状況が不明だったものの、PD-L1の発現状況別のサブグループ解析も行われた。PD-L1の発現状況はCRT施行前に測定された。

 事前の規定に基づき、PD-L1の発現が25%以上、25%未満、不明の3つの集団別に解析が行われた。その結果、全ての集団でPFS、OSともデュルバルマブ群が優位な傾向を認めたが、PD-L1の発現が25%以上の集団ではより優位性が高い傾向にあった。

 さらに事後解析として、PD-L1の発現が1%以上、1〜24%、1%未満の集団別の解析が行われた。その結果、PFSについては全ての集団でデュルバルマブ群が優位な傾向を認めたが、OSについてはPD-L1発現が1%未満の群ではプラセボ群が優位な傾向が見られた。

TTDM、新規病変の発生率も改善

 次に、Antonia氏は死亡または遠隔転移までの時間(Time to Death or Distant Metastasis;TTDM)、および新規病変の発生率についてもアップデートされた成績を報告。中間解析で報告されたデュルバルマブ投与による改善効果が維持されていたと述べた。

 TTDM中央値は、プラセボ群の16.2カ月(95%CI 12.5〜21.1カ月)に対し、デュルバルマブ群では28.3カ月(同24.0〜34.9カ月)と有意な延長を認めた(HR 0.53、95%CI 0.41〜0.68)。新規病変の発生率は、プラセボ群の33.8%(80例)に対し、デュルバルマブ群では22.5%(107例)と低かった。

 安全性については、長期追跡による新たな有害事象は認められなかった。グレード3/4の有害事象発現率はデュルバルマブ群で30.5%、プラセボ群で26.1%だった。

 これらの結果から、同氏は「PACIFIC試験は、Ⅲ期切除不能NSCLCに対するCRT施行後の維持療法薬として、生存率の改善を認めた初の試験である」と報告した。

抗PD-1/L1抗体の至適投与時期は?

 この結果に対し、ディスカッサントの米・University of Chicago Medicine and Biologic SciencesのEverett E. Vokes氏は「CRT施行後の維持療法としてのデュルバルマブ投与は、Ⅲ期切除不能NSCLC患者に対する新たな標準治療である」と考察。CRTの施行時に最も懸念されるものの1つとして肺臓炎の発症が挙げられる。PACIFIC試験のデュルバルマブ群では、肺臓炎の発症率が全グレードで34%と既報の成績に比べて若干高いものの、グレード3以上に限ると3%に抑えられていた点を評価した。

 また同氏は「Ⅲ期のNSCLC患者においても、PD-L1の発現状況は測定すべきである。今回、デュルバルマブ群の優位性が示されなかったPD-L1の発現が1%未満の患者に対しては、新たな治療法の開発が必要である」との見解を示した。

 さらに同氏は、今後の課題の1つとして、”Ⅲ期のNSCLC患者に対し、抗PD-1/L1抗体をどのタイミングで投与すべきか”という問題を挙げた。現在は、Ⅲ期のNSCLC患者に対し、CRT施行時に抗PD-1抗体ニボルマブを併用し、さらにCRT施行後の維持療法として同薬を投与する効果を検証した臨床試験(ETOP 6-14 NICOLAS)や、CRT施行前の導入免疫療法として抗PD-L1抗体アテゾリズマブを投与し、さらに同薬をCRT施行後の維持療法としても投与する有効性を検証した臨床試験〔Alliance Foundation Trial (AFT-16)〕が進行中であるという。

(WCLC 2018取材班)

【解説】

和歌山県立医科大学呼吸器内科・腫瘍内科教授の山本信之氏のコメント

リアルワールドデータの集積が重要

 近年、遠隔転移を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの新薬が相次いで承認され、それに伴い治療成績も格段に向上してきている。しかしながら、その恩恵は化学放射線療法(CRT)が標準治療とされるⅢ期切除不能NSCLC患者には還元されず、この20年間、放射線治療を変更しても併用薬剤を変更しても、この領域における標準治療は変化しなかった。

 CRT後にデュルバルマブを追加する効果を検証するPACIFIC試験は、昨年(2017年)に無増悪生存期間(PFS)の有意な延長効果があることが報告され、今年に入って、全生存期間(OS)延長効果を認めることもプレスリリースされていたが、その程度については不明であった。それが今年の世界肺癌学会議のプレジデンシャルシンポジウムの最初の演題として発表され、単なるOSの有意な延長だけでなく、そのハザード比が0.68と大きな差であったことが明らかにされた。まさにその瞬間、「標準治療が20年ぶりに更新された」と感じた。

 またこのデータでは、18カ月のPFSは約50%で、PFSのカーブはいわゆるテイルプラトーであり、18ヵ月のPFSである約50%がそのまま5年生存率にも還元できそうな雰囲気を醸し出していた。すなわち、長期生存に関しても、これまでの3倍程度向上する可能性が示唆されたわけである。

 ディスカッサントが述べているように、まだ検討すべき案件は残されているが、20年ぶりの新規標準治療の確立に素直に感謝の意を表したい。

 ちなみに、私は現時点の情報のみでPD-L1の発現状況によってデュルバルマブ投与の可否を決定するのには反対である。

 いずれにしても、今後はデュルバルマブのリアルワールドデータの集積が重要であることは間違いない。 日本ではリアルワールドデータの収集・評価に市販後調査という優れた制度があるが、デュルバルマブに関しては、それとは別に日本肺癌学会とアストラゼネカ社が共同研究として、同薬のリアルワールドデータの収集をバイオマーカー研究を絡めて実施する予定になっている。実施の際には、ぜひ皆さまにもご協力いただければ幸いである。

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