“会話”で患者に皮膚がん予防促す手法とは?

ABC介入法で皮膚科受診患者の日焼け予防行動が改善

 皮膚がんの予防には日焼け対策が重要だが、皮膚科医が一方的に指導しても患者の行動変容にはつながりにくい。こうした中、患者との会話の中で日焼け予防に関する意識や行動を評価するAddressing Behavior Change(ABC)と呼ばれる介入法が、日焼け予防行動の改善に有効であることが、米・ Pennsylvania State UniversityのKimberly A. Mallett氏らの研究で示された。同研究では、ABCによって日焼け止めの使用頻度が高まり、日焼けの機会は減るなどの行動変容が認められたという。詳細はJAMA Dermatol2018年8月8日オンライン版)に掲載された。

介入に要する時間は3分未満

 紫外線への曝露は皮膚がんの危険因子であるため、リスク低減には日光にできるだけ曝露しないようにするとともに、日焼け止めの使用や紫外線を防ぐ衣服を着用することが望ましいとされる。Mallett氏らによると、多くの皮膚科医は患者指導の一環としてこうした情報を伝えているが、患者の知識が増えても必ずしも行動変容につながるわけではないという。

 それに対し、患者との会話の中で日焼けのリスクや予防対策への意欲、行動を阻む問題などを医師が評価すると、患者の行動が変容し、アウトカムも改善する可能性が示唆されているという。そこで、同氏らは限られた診察時間内でもこうしたアプローチを取り入れることができるABC介入法を考案(Arch Dermatol 2011; 147: 1451-1453)。この介入法は短時間で簡単に習得でき、患者との会話に組み込むだけであるため、所用時間は3分未満で済むという。

 同氏らは今回の研究で、ABC介入法と医師とのコミュニケーションに対する患者の満足度および日焼け予防行動の変化との関連について検討した。なお、満足度は「健康に関する心配や不安について話し合う」「日常的な日焼け止めの使い方を提案してもらう」といった具体的な項目について1(低い)~5(高い)点で評価した。

 対象は、皮膚検査またはモーズ軟膏療法を行うために米・Northeastern health care systemの2施設の皮膚科を受診した21~65歳の患者。対象をABC介入法を導入する施設(ABC群77例)と通常の診療を行う施設(対照群82例)に組み入れた。ABC群の平均年齢は52.4歳で、皮膚がんの診断例が58%を占めていた。一方、対照群はそれぞれ51.4歳、44%だった。両群とも女性(ABC群60%、対照群72%)と白人(同95%、99%)の割合が高かった。

 ABC介入法を導入した施設の皮膚科医は、試験開始前に同介入法に関する1時間の研修を受け、6つの要素から成る標準化されたスクリプト()に沿った模擬診療などを通じてその方法を習得した。

表. 標準化されたABC介入法の練習用スクリプト

  1. 屋外ではどのような活動を楽しんでいるか。過去1年間に日焼けをした経験はあるか
  2. 日焼け止めを使う意向の強さを1~10点で評価すると何点か
  3. 日焼け止めの使用について好ましくないと感じる点はあるか
  4. もし好ましくないと感じる点がある場合、どのような方法でそれを解決できると考えられるか
  5. 日焼け止めの他に皮膚を日光から守る方法にはどのようなものがあるか
  6. さまざまな研究に関する情報を提供し、患者が考えた解決策を要約する

JAMA Dermatol 2018年8月8日オンライン版)

患者の満足度も上昇

 その結果、対照群と比べてABC群では医師とのコミュニケーションに対する満足度が高かった。また、介入後1カ月の時点で1回以上の日焼け経験を報告した患者の割合は、対照群の35%に対してABC群では18%と低かった(P=0.01)。ただ、介入後3カ月時点では両群に有意差はなかった。

 また、ABC群では日焼け止めを顔に塗る患者の割合がベースライン時の67%から3カ月時には79%へと12ポイント増加。それに対し、対照群ではベースライン時の73%から3カ月時には69%へと4ポイント減少しており、両群で有意差が見られた(P=0.001)。日焼け止めを身体に塗る患者の割合も、3カ月間にABC群では12ポイント増加したが、対照群では1ポイント減少した(P=0.02)。さらに、日焼け止めを塗り直す習慣が身に付いた患者の割合も、ABC群では15ポイント増加したが、対照群では変化が認められなかった(P=0.002)。

 以上を踏まえ、Mallett氏らは「ABC介入法は皮膚科を受診した患者の日焼け予防行動の改善に有用であることが示された」と説明。また、「皮膚がんの有病率の上昇と、それに伴う医療費の増加を考慮すると、日焼け予防行動のわずかな改善でも全体的に見れば有益だと考えられる」と述べ、「研修医のプログラムや皮膚科医の生涯教育に組み込む内容としてもABC介入法のトレーニングは適しているかもしれない」との見解を示している。

岬りり子

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