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プレスリリース

腫瘍溶解アデノウイルスの開発に成功;RNAの安定化を利用

2019-01-04
北海道大学

 北海道大学大学院歯学研究院の東野史裕准教授らの研究グループは,がん細胞などの中に AU-rich element(ARE)と呼ばれる分解シグナルを持つmRNAが安定して存在していることを利用し,がんなどの腫瘍を溶解させるアデノウイルスの開発に成功しました。

 DNAから複製(転写)されタンパク質を作り出すmRNAの中には,タンパク質合成の役目を終える前にすぐに分解されるものがあります。AREは,このようなmRNA分解シグナルの一つです。ARE-mRNAも通常すぐに分解されますが,がん細胞など様々な疾患の細胞では安定化され,分解されにくくなります。

 研究グループは過去の研究で,アデノウイルス感染細胞でもウイルス遺伝子産物 E4orf6 により ARE-mRNA が安定化され,この安定化がウイルスの複製に重要であることを解明しています。従って,E4orf6 を欠失したアデノウイルス dl355 は,ARE-mRNA があらかじめ安定化されているがん細胞では増殖し,最終的には細胞を溶解しますが,正常細胞では E4orf6 がないためあまり増殖できず, 細胞に影響を与えないことが期待されます。以上を踏まえ,dl355 の腫瘍溶解効果を検討しました。

 その結果,dl355はがん細胞で非常に増殖効率が高く,細胞溶解効果は正常細胞よりもがん細胞の方が高いことがわかりました。また,dl355 はヌードマウスに移植したヒトの腫瘍にも溶解効果を持っていました。さらに,dl355 はすでに臨床応用されているウイルスより高い腫瘍溶解効果を持つことが明らかになりました。これらの結果は,dl355が腫瘍溶解ウイルスとして有用であることを示しています。

 なお,本研究成果は,2018 年 11 月 12 日(月)公開の Oncology Reports 誌に掲載されました。遺伝子パネル検査については、シスメックス株式会社と共同で開発を進め、薬事承認を目指してまいりました。そして、2018年6月に同社より製造販売承認申請が行われ、この度2018年12月25日に遺伝子パネル検査システムで初めて体外診断用医薬品・医療機器として承認されました。引き続き、保険適用を目指し準備を進めます。