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乳癌術前化学療法後に遺残癌の有無をctDNAで高感度に検出する方法:ターゲットデジタルシーケンスTARDISの開発

2019-08-09
Science Translational Medicine
推薦記事 田辺 真彦 氏 東京大学大学院医学系研究科乳腺内分泌外科 講師・診療科長

Personalized circulating tumor DNA analysis to detect residual disease after neoadjuvant therapy in breast cancer

Science Translational Medicine 2019年8月7日オンライン版

 乳がん領域におけるリキッドバイオプシーの解析対象の1つとして血中循環腫瘍DNA(ctDNA)があるが、既存のctDNAの検出法の多くは感度が不十分とされている。特に最初の化学療法を受けた患者では、ctDNAの検出が難しくなるとされている。そこでMcDonald氏らは、血漿中の微量のctDNAに対する感度を向上させるために、患者固有のがん変異の多重分析のためのターゲットデジタルシーケンス(TARDIS)を開発した。
 同氏らは、TARDISにより、Ⅰ~Ⅲ期乳がんの女性患者33例からの血漿サンプル88件から、患者1人当たり最大115の変異を検出することに成功。また術前補助化学療法施行後のctDNA濃度は、病理学的完全奏効(pathCR)を認めた患者では、残存病変を有する患者に比べて有意(P=0.0057)に低下していたことを確認した。さらにpathCRを認めた患者では、術前補助化学療法中にctDNAが大幅に減少していたことも確認された。
 このTARDISを用いたctDNA検出の感度は、これまでの検出法に比べて最大100倍の改善が認められたという。

■推薦コメント

 術前化学療法による遺残癌の有無を知ることは、乳癌治療の根治性を高めるためにも、過剰治療を避けるためにも、重要である。転移性乳癌や進行性乳癌とは異なり、早期乳癌のctDNA濃度は低く、術前化学療法後の遺残癌となるとその濃度はさらに低い。本論文のように検出感度の高い手法を開発することの意義はとても大きい。

(田辺真彦氏)