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DNA相同組み換え修復不全に特異的なmutational signaturesを臨床検体から検出する新手法の開発

2019-08-09
Nat Genet
推薦記事 田辺 真彦 氏 東京大学大学院医学系研究科乳腺内分泌外科 講師・診療科長

Detecting the mutational signature of homologous recombination deficiency in clinical samples.

Nat Genet 2019; 5: 912-919

 BRCA1および(または)BRCA2変異は、一般的なDNA相同組み換え修復不全(homologous recombination deficiency; HRD)の徴候である。最近のゲノムワイド解析によると、これらの遺伝子変異腫瘍と同様のパターンの変異が他のいくつかの腫瘍にも認められている。そこで、Gulhan DC氏らは、「Signature Multivariate Analysis(SigMA)」と呼ばれる、標的遺伝子パネルからHRDと関連のある突然変異を正確に同定することが可能な新規の評価ツールを提唱している。既存の方法では、全ゲノムまたは全エクソームデータが必要となるが、SigMAでは、機械学習技術と組み合わせた尤度ベースの測定を用いて変異数が少なくてもHRDの検出が可能となっている。
 同氏らがHRDとして同定した細胞株は、PARP阻害薬に顕著な反応を示し、HRDを有する卵巣がん患者ではプラチナ製剤による治療で全生存期間が顕著に長かった。遺伝子パネルに基づいて変異の同定を可能にすることで、治療が奏効すると考えられるHRDを有する患者数が増加するのではないかと期待される。

■推薦コメント

 がんゲノム解析により、mutational signaturesからその基盤となっている遺伝子変異を予測できる時代になった。HRDに特異的なmutational signaturesであるSignature 3は、BRCA1/2に加えPALB2RAD51Dなどの、生殖細胞系列変異や体細胞変異を有する癌で認められることが多いが、近年、これら遺伝子群以外にも責任遺伝子があることが明らかとなりつつある。HRD状態にある癌には、HRDを標的とする治療が奏効することが期待されるため、mutational signaturesから癌がHRD状態であるか否かを予測できることの意義は大きい。

(田辺真彦氏)