悪性リンパ腫

プレスリリース

HTLV-1ががんを引き起こす新規メカニズムを解明

 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)と呼ばれる慢性の神経疾患の原因ウイルスで、日本に現在約80万人の感染者が存在すると推定されています。このウイルスは、感染したリンパ球の数を体内で増やすことにより疾患を引き起こし、約2~5%の感染者では感染細胞が悪性化しATLを発症します。

 熊本大学病院感染免疫診療部の樋口悠介助教、同大学院生命科学研究部の安永純一朗准教授、松岡雅雄教授らは、ウイルスが持つHTLV-1 bZIP factor(HBZ)遺伝子に注目し、HBZが機能するように遺伝子操作したモデルマウス(HBZトランスジェニックマウス:HBZ-Tgマウス)を作成して解析してきました。このHBZ-Tgマウスでは、ヒトのHTLV-1感染者と同じ種類のリンパ球(CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性T細胞)が増加し、炎症と悪性リンパ腫を発症することから、HBZがHTLV-1の病原性に重要な役割を果たしていると考えられます。HBZ-Tgマウスを詳細に解析することで、HTLV-1が慢性に感染し、病気を引き起こすメカニズムの解明につながると考えられます。

 本研究成果は米国科学アカデミー(NAS)が発刊する『PNAS』に令和2年5月30日(日本時間)に掲載されました。

ポイント
・HTLV-1が、HBZ遺伝子の作用により、HTLV-1に感染したT細胞のサイトカインへの反応性を変えることで炎症と発がんを引き起こすメカニズムが明らかとなりました
・これらの所見は、HTLV-1が引き起こす悪性腫瘍(ATL)およびHTLV-1関連炎症性疾患の発症メカニズム解明に寄与し、新しい治療法、発症予防法の開発につながることが期待されます

2020-06-02
AMED日本医療研究開発機構