前立腺がん

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ダロルタミドが国内発売、nmCRPCに対する新たな治療選択肢に

2020-08-11
Oncology Tribune

 非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に対する第二世代抗アンドロゲン薬として、新たにダロルタミド(商品名ニュベクオ)が国内承認され、今年(2020年)5月に発売された。8月6日に製造販売元のバイエルが東京都でプレスセミナーを開催し、nmCRPCの治療戦略およびダロルタミドへの期待について、横浜市立大学市民総合医療センター泌尿器・腎移植科部長の上村博司氏および群馬大学大学院泌尿器科学教授の鈴木和浩氏が講演した。


 


積極的な治療介入により転移までの期間を延長


 上村氏は、前立腺がんのサロゲートマーカーとして無転移生存期間(MFS)が重視されるようになったと解説。特に、前立腺特異抗原(PSA)の倍加時間(PSA-DT)が短い症例ではMFSや全生存期間(OS)は短いため、積極的な治療介入が求められる。また、PSA値をモニタリングして、2ng/mLに達した時点で初回の画像検査を行うことが推奨されている点を紹介。「画像検査により転移病変の有無を確認すべきである」と指摘した。


 nmCRPC診断のポイントについて、同氏は「治療介入により転移までの期間を延長することが重要であり、画像診断によるCRPCの早期診断が求められる」と強調し、「医師は治療効果や予後を重視しがちだが、患者は倦怠感や疼痛などのQOLを重視している。適切なコミュニケーションを図り、こうしたギャップを解消することも重要」と付言した。


主な有害事象の発現率はプラセボと同等


 鈴木氏は、ダロルタミドの特徴およびnmCRPCに対する同薬の有効性と安全性検証した第Ⅲ相臨床試験ARAMISについて解説した。


 nmCRPCに対する第二世代抗アンドロゲン薬としては、アンドロゲン合成阻害薬のアビラテロン(商品名ザイティガ)、非ステロイド性アンドロゲン受容体拮抗薬のエンザルタミド(商品名イクスタンジ)、アパルタミド(商品名アーリーダ)が国内で使用可能であり、ダロルタミドは3剤目の非ステロイド性アンドロゲン受容体拮抗薬となる。


 ダロルタミドの構造はエンザルタミド、アパルタミドと大きく異なり、アンドロゲン受容体に対する結合親和性が高く、アンドロゲン応答遺伝子の転写活性をより強く阻害することが示されている。また、血液脳関門透過性が低いことがマウスの実験で示されており、倦怠感や転倒などの有害事象の抑制に寄与する可能性がある。


 併用注意の薬剤は、強いCYP3A誘導薬(リファンピシンなど)と、乳がん耐性蛋白(BCRP)、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1/OATP1B3の基材となる薬剤(スタチン)の2種類のみと少なく、血中半減期も14.1時間と短いため有害事象発生時の対応が容易となることが期待されるという。


 今年(2020年)の第56回米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scientific Program、5月29〜31日、ウェブ開催)ではARAMIS試験におけるOSの最終解析の結果が報告され、3年全生存率はプラセボ群の77%(95%CI 72~81%)に対し、ダロルタミド群では83%(同80~86%)と有意に良好で(HR 0.69、95%CI 0.53~0.88、P=0.003)、主な有害事象の発現率は両群で同等だった。なお、同学会ではエンザルタミド、アパルタミドのOS最終解析も報告されている(関連記事「nmCRPC治療薬3剤のOS最終解析」)。


 同氏は「ダロルタミドは前立腺がん治療の新たな選択肢の1つであり、nmCRPC患者のライフスタイルに合わせた治療選択が可能となる」と結論した。


(安部重範)